パーライトはどうしてラメラ組織になるのですか.また冷却速度や強度との関係を教えてください.
オーステナイトからフェライトとセメンタイトが同時に析出するときに,ラメラ構造をとることが多く,この組織をパーライトと呼びます.どのような形態になるかは,相の体積率と界面エネルギー,拡散時間との兼ね合いで決まります.金属の組織はできるだけエネルギー的に安定になろうとするので,球状の形態をとろうとします.しかしながらセメンタイトの体積率がある程度多い場合は,球状でたくさんのセメンタイトが出ると逆に界面が多くなり,全体としてのエネルギーが大きく不安定になります.またパーライトにおけるフェライトとセメンタイトは特定の方位関係を持っており,お互いの結晶構造の関係から界面が平らであるほうが比較的安定になるようです.そのためセメンタイトは球状よりも板状の形態をとるようになります.もちろん条件によっては,棒状や球状のセメンタイトも見られます.
フェライトとセメンタイトは炭素濃度が異なりますので,成長する時は拡散が必要になります.拡散する時間が十分あれば層間隔は広くなりますし,時間があまりなければ層間隔は狭くなります.すなわち冷却速度が早いほど層間隔は狭くなります.純粋な共析鋼すなわちパーライト100%の材料では,引張強さや降伏応力は層間隔をλとすると.σ=σ0+k/λと表されるようです.すなわち強度特性は層間隔の逆数と直線的な関係にあります.ただし,実際の材料はパーライトだけでできているわけではないので単純には整理できないと思ってください.何れにせよ層間隔が狭いほど強度は大きくなります.従いまして,冷却速度が大きければ強度も大きくなることになります.
(『鋳造工学』92巻8号掲載)