マグネシウム合金は不純物が多いと腐食しやすいので,AZ91合金はD規格を使用しておりますが,構内で再溶解してリサイクルできますか?
構内リサイクルですが数点注意して頂ければ十分可能です.外部で行っているリサイクル工程では,フラックスを使用してマグネシウム合金内の酸化物除去を行うと共に再溶解に低下するAl,Mn及びBe成分の補正(添加)と上昇傾向にあるFe成分の除去になります.脱Fe工程では一旦溶湯温度を上げ,溶湯に塩化MnまたはAl-10%Mn合金を添加します.その後徐々に温度を下げて溶湯中にAl-Fe-Mn金属間化合物を生成させ重力偏析を利用して沈降させます.構内という事で,フラックスレスの連続溶解リサイクルを前提に話をさせて頂きますと,前記脱Fe工程が実施出来ないので,下記6点に注意して頂きたいと思います.
- 溶解時のFeの溶出を極力抑える為に溶湯温度を低めに設定する.
- 溶湯表面の燃焼を極力抑える為に炉内圧を正圧に維持すると共に保護ガスが溶湯表面に直接届く様なレイアウト及び流速を維持する.
- るつぼの内面に酸化チタン等を用いてコーティングする
- 酸化物分離が十分行える様にるつぼ容積を選定すると共に隔壁を設ける
- 溶湯表面及びるつぼ底部のドロス・スラッジを定期的に清掃する.
- 溶湯分析頻度を上げ,Al,Mn,Be成分補正を行う
外部リサイクルに比べて10~20%程度の費用で運用できますが,多少手間もかかりますので事前検討を十分行って実施してください.
(『鋳造工学』90巻4号掲載)