中国内の鋳物メーカーよりFCD500の鋳物部品を購入する事を検討しています.その中国の鋳物メーカーは「鉄型砂被覆鋳造法」という方法で,製品の形状に加工された金型表面(キャビティ表面)に8mm程度のシェル砂の膜を焼き付けて鋳造する方法なのですが,この鉄型砂被覆鋳造法が日本では1件も採用されていないのはどういう理由ですか? ここの鋳物の単価は日本の鋳物メーカーより30%ほど見積が安いですが品質が心配です.
鉄型砂被覆鋳造法を用いた球状黒鉛鋳鉄の製造に関しての質問に対する回答です.
鉄型砂被覆鋳造法は金型に薄くシェル砂等をコーティングして鋳造する鋳造法です.
球状黒鉛鋳鉄に対して,鉄型砂被覆鋳造法が使用されない理由は下記のようなことが考えられます.
・金型鋳造並みの冷却速度のため,球状黒鉛組織が得られず,チル組織(遊離炭化物)が発生する.
・チル組織が発生すると球状黒鉛鋳鉄の特性が得られないため,熱処理を行い,チルを黒鉛とフェライトにする処理が必要になるためコストが大きくなる.チルの検査コストもかかる.
・冷却時間と鋳造サイクルに関して
球状黒鉛鋳鉄の組織はA1変態点(727℃)以下にならないとパーライト/フェライト組織が得られません.
A1変態点以上で取り出すと,冷却速度が変化し,パーライト/フェライト比が安定して得られず,機械的特性が安定しません.
そのため,A1変態点以下に鋳物温度が低下するまで型内で冷却する必要があります.
球状黒鉛鋳鉄の溶湯は球状化処理して10~15分以内に鋳造する必要があるため,いくつもの金型を準備しないと,大量生産ができません.
・金型コストに関して
通常,金型は鉄を使用します.砂を介しているとはいえ,金型には大きな熱が加わります.そのため,金型の損耗が激しく,金型コストが高くなると考えられます.
これらの点から日本では鉄型砂被覆鋳造法を球状黒鉛鋳鉄に適用していないません.
鉄型砂被覆鋳造法より,砂厚が厚い,シェルバックメタル法という方法で製造されていた製品はあります.
中国で安くできているのは,日本よりコストが安いためと考えられます.
インターネットで検索した鉄型砂被覆鋳造法は下記のようなメーカーがありましたが,高クロム鋳鉄や可鍛鋳鉄で,球状黒鉛鋳鉄は製造していないようです.
<石家荘東環可鍛鋳鉄鋳物被覆砂型鋳造プロセス>
可鍛鋳鉄なので,基本はチル化しているため適用できていると考えられます.
<四方泰順>
https://ja.sifangfurnace.com/info/the-casting-process-of-iron-based-coated-sand-50149888.html
クロム含有鋳鉄ボールで黒鉛が晶出しない.
上記,2社の製品であればA1変態点まで冷却しないでも型ばらしが可能なため,生産効率が高いと考えられます.また,型ばらしが早ければ,金型に対するダメージも小さくなるため,生産できていると考えられます.
中国企業のHPの状況から判断して,おそらく「鉄型品被覆鋳造法」で作製した球状黒鉛鋳鉄鋳物は,表面が硬化して,日本の規格FCD500-7(引張強さ500MPa以上,伸び7%以上)に対して,引張強度は満足しますが,伸びが満足できるかが懸念されます.
FCD500の鋳物部品の購入にあたっては,一度,中国メーカーに試作してもらい,試作品を見て,要求事項にマッチしているか判断されてはいかがでしょうか.
(『鋳造工学』98巻5号掲載)

