寒冷地で使用する機械装置において,金属部品の低温脆化を防止する目的で,装置組み立て後に1年ほど放置しておくことで脆化を防止できると聞きました.材料も人間と同じで寒さに慣れるようなことがあるのでしょうか?

機械工学事典1)によると「一般に鋳造品は,その凝固・冷却の過程で温度変化が均一にならないために鋳造応力を生じ,鋳放しのままで使用すると,長い間にその応力のために変形を起こす恐れがある.」とされており,その応力を除去するために,「枯らし(Seasoning)」が行われています.かつては,長時間の大気中の放置等が行われていましたが,現在では焼きなましの熱処理によって鋳造応力を除去する方法が採られています.また,ねずみ鋳鉄ではこの「枯らし」処理によって材料の加工性(被削性)を改善させることも報告2)されています.

この様に,室温大気中での長時間の保持によって応力を除去することは行われますが,このために金属が寒さに曝され続けることでその性質が変化して「慣れる」や「環境に順応」という事は起こり得ません.

鋼材(体心立方格子構造)の材料の場合,銅合金,アルミニウム合金,ニッケル合金,オーステナイト鋼などの材料(面心立方格子構造)のものに比べて,低温脆性が起こりやすくなるため,設計や材料選定では注意が必要です.

金属材料は,急激な温度変化にも順応せず,内部に発生する熱応力が原因で割れや変形,機能低下が起こり得ます.これらの評価のためには,「冷熱衝撃(ヒートショック)」試験3)行われています.

1) (一社)日本機械学会 編:機械工学事典,丸善(1997),p243.

2) 望月栄治,矢島善次郎,岸陽一,清水謙一,吉田敏樹:ねずみ鋳鉄の被削性に及ぼす枯らし及び応力除去焼なましの影響,鋳造工学,78,2006,pp.345-350.

3) 大橋秀三,石黒徹,後藤宏:冷延作動ロールの耐熱衝撃クラック性に及ぼす冶金学的因子,鉄と鋼,77,1991,pp. 652-659.

(『鋳造工学』98巻3号掲載)