展伸材が鋳物合金に混入して悪さをすることはありますか?

“あります”と考えるべきでしょう.以下に詳細を記します.

鋳物材(ダイカスト,鋳物を含めて)も展伸材も,大半の成分は同一と考えてよいので,特に区別する必要はないと思います.ただし,鋳物材の場合 は,”複雑形状を凝固過程で形成すること,鋳肌の大半をそのまま利用すること”が必要であるため,溶解,鋳造,凝固への悪影響がある成分は,極めて大きな 問題になります.

展伸材の場合はスラブやビレットが比較的単純な形状であり,また,鋳肌部分は除去するため,若干問題がある成分でも何とか対応できる場合がありま すが,鋳物では一般には複雑形状であり,また鋳肌をそのまま用いることが多いため,溶解・凝固時の挙動に対する影響が極めて大きく,問題になることが少な くありません.

凝固時の問題としては,Snなどのきわめて低融点の成分が多い場合に発生する割れが代表例でしょう.

また,溶解時の問題としては,航空機用材料などに用いられているLiが,硬い酸化被膜の形成や流動性の低下をごく微量でも発生させるので大きな問題になることがあります.

なお,Cdなどの法規制が問題になる成分もあります.展伸材の代表的な添加材であるTi-B系の結晶微細化材などは鋳物材にも有効に作用するので問題はありません.

幸いなことに,通常,大半の展伸材スクラップは一般的な配合調整だけで何とか使いこなせる状況ですが,問題になる材料が混入することが時々あるので,管理体制が重要です.