弊社ではアルミダイカストをコールドチャンバーで行っています.品質向上で排気を安定させたいのですが,250-400ショットも鋳造するとチルベントの山形状に粘土質の堆積物や細かなアルミ屑が堆積してしまい,排気を阻害する品質問題が慢性化しています.定期ショット数でベントブロックを清掃する苦肉の策で現在は生産を行っていますが,堆積しない方法があれば教えてください.スプレープログラムで離型剤とエアーを塗布する条件にはしています.何かいい方法があれば教えてください.
チルベントは,キャビティ内のガスを大量に排気可能なガス抜きで溶湯の吹き出しを防ぐため,冷却効果が大きい波板形状を有するブロックのことで,マッシブベントやマスベントともいいます.
チルベントは,クリアランスが0.4~0.6mmで波板数が4~15段,幅が20~200mmなど多様であり,製品によって使い分けています.チルベントの材料は,入子と同じSKD61などの耐熱鋼を焼入れ・焼戻ししたものを使用したり,Cu-Be材などの高熱伝導材の使用したりします.高熱伝導材のチルベントでは,クリアランスは,約1.0mmが可能であり排気性能はSKD61より優れますが,寿命は短くなります.
チルベントには,冷却回路を設け,必ず通水して使用することが大切です.できるだけチルベントブロックの温度は低くしておいた方が鋳ばりの吹き出しがなく安定した鋳造が期待できます.チルベント表面の粘土質の堆積物は,チップ潤滑剤や離型剤の残渣と思われます.また,アルミ屑は,飛散した溶湯の細片と思われます.これらに対しては,質問者の方も実施されているように,毎ショット離型剤・エアブローにてチルベント表面を清掃することが大切です.しかし,どうしても堆積物が付着してしまう場合には,約2時間に1度は,チルベントト表面をブラシなどで堆積物を清掃します.ワイヤーブラシに灯油をしみこませて,ブラッシングします.ドライアイのスショットブラストも効果的ですが,あまり普及していないようです.清掃は,堆積によるガス抜け量の減少を防止するために重要です.ついでに,パーティング面全体の清掃も行うといいと思います.また,チルベント表面に濡れ性の悪い表面処理(例えば カーボンコーティング)を行うことで,付着を低減できる可能性があるかと思います.さらに,チルベントブロックに押出ピンを配置することが大切です.押出ピンは,凝固した溶湯がマスベントに残ることを防止します.また,チルベント手前にオーバーフローを設置することで,離型剤の残渣やアルミ屑をトラップする可能性もあるかと思います.
(『鋳造工学』93巻8号掲載)