弊社では,アルミニウム合金低圧鋳造法を用いて,エンジン部品を生産しています.シェル中子を使用しており,中子砂排出のため焼鈍を実施しています.焼鈍工程を廃止した場合,素材の残留応力が問題になろうかと思いますが,製品として品質上悪影響が発生するでしょうか? また,残留応力を測定する方法として最適な方法はありますか? できれば非破壊検査方法があればありがたいのですが…….
御社が何度くらいで焼鈍をされていたのかわからないので,具体的な数値を挙げることはできませんが,焼鈍工程を廃止すると,鋳造時の凝固から離型において 発生する残留応力がそのまま維持されることが考えられます.
残留応力は,部品の形状や鋳造条件などにも影響されますし,また,製品内の部位によって異なり ます.そのために,残留応力が発生する部位と大きさを正確に把握する必要があります.引張残留応力は部品の実体強度や疲労強度を低下させると言われてお り,これらを考慮した部品設計が必要になります.
また,残留応力が発生しやすい部位には凝固時に温度差が大きくなる部位などがあり,例えば,厚肉部と薄肉部がつながっている部分では薄肉部に対する厚肉部 の凝固遅れにより応力が発生しやすくなります.従って,鋳造時に残留応力が発生しにくい形状設計も重要になります.
残留応力の測定には歪みゲージを使う方法が一般的ですが,破壊検査法であり,技能と時間を要するので工程能力を算出できるほどのデータが取れないことが多 く,測定対象とするサンプルの選定と測定部位の妥当性を考慮する必要があります.アルミニウム合金鋳物でも非破壊にて残留応力を測定する方法として,X線 や中性子ビームを用いる方法がありますが,コストが高く,また,設備も限られるため,一般的ではありません.
残留応力を含む鋳物の品質評価技術については,日本鋳造工学会編集委員会がまとめた「鋳物・ダイカストの品質評価技術ハンドブック-誰でもわかる事例とノ ウハウ-」が出版されていますので,参考にして下さい.