指向性凝固とは、どういうことですが? 定量的に表現する指標はどんなものがありますか?
一般的に鋳物を全体的に同時期に凝固させることよりも,一定方向に順次凝固させたいことが多くあります.この後者の凝固形態を指向性凝固といいます.
金属 溶湯は凝固する時に体積収縮、つまり凝固収縮が発生します。そのため、鋳物や鋳塊を外周部から凝固させると、鋳物の中心部などは凝固収縮による溶湯不足で 引け巣などの鋳造欠陥が発生しやすくなります。これを防止するために凝固形態を指向性凝固にする方法があり,その具体的な方法として砂型鋳物などに冷し金 や押し湯を用いることがあります.なお、単結晶タービンブレードなどを製造する特殊な一方向凝固法も含まれる場合もあります。
指向性凝固を実現させるためには、最初に凝固させたい押し湯側とは逆の部分に冷し金を用いて冷却を速くし、押し湯部分に向かって徐々に凝固が進行するよ うにします。この時、鋳物の断面形状や鋳型の熱伝導、また湯流れを工夫したり、押し湯部分を保温したりします。そして、押し湯部分が最後に固まり、そこに 引け巣などの鋳造欠陥が集中するようにします。
凝固の指向性が十分かどうかの定量的な指標として,(1)凝固時間の順序(凝固時間が端部または冷し金の位置から押湯に向けて単調に変化するかどう か),(2)凝固時の温度勾配,(3)凝固時の温度勾配と固液界面の移動速度との比などがあげられます.このような指標の推定は、鋳物や鋳塊の形状、鋳造 金属(純金属か合金か共晶合金かの違い)により種々様々であり,短く単純形状の鋳物では,それほど複雑ではありませんが、長尺で複雑形状の鋳物では様々な 工夫が施されているため、推定が難しいと思います。
なお最近では、凝固シミュレーションソフトにより個々の鋳物形状に適した押し湯や冷し金位置などを予め 設計することができるようになってきています.