最新のJISで規定された固溶強化フェライト基地球状黒鉛鋳鉄の特徴と使用用途を教えてください.
ご質問には,「最新のJISで規定された」とありますので,従来からあるSi-Mo-FCDのような耐熱用途のものは除いて回答します.
固溶強化フェライト基地球状黒鉛鋳鉄(SSSGI : solid-solution strengthened ferritic spheroidal graphite cast iron)は,Siを3.0~4.3mass%含有することで,フェライトに富む組織を形成し,Siの固溶強化効果により450~600MPaの高い強度を持ちながらも,比較的高い伸び18~10%を維持しています.このSiの多量添加は,凝固時の黒鉛生成を促し,薄肉部でもチルが発生しにくくなります.また,共析変態の開始温度が高くSiの黒鉛化助長作用と相まって基地のフェライト化が促進され,肉厚の影響を受けにくいという特徴もあります.
機械的性質に関しては,Siの固溶強化によりフェライトの硬さが増し,SSSGIの0.2%耐力は同強度のSGI(フェライト-パーライト系の球状黒鉛鋳鉄)よりも大きく,その耐力比は約80%に達します.さらに,SSSGIの高サイクル疲労強度は,従来のSGIより約10%高いことも報告されています.ただし,Siは延性-脆性遷移温度を上昇させるため,適用する際には実際の温度環境や材料に生じるひずみ速度,応力状態に応じて合理的に判断する必要があります.
SSSGIの適用用途としては,自動車の足回り部品,農業機械,建設機械の油圧部品などの事例があります.建設機械の油圧部品においては,いずれの肉厚部においても一様なフェライト基地となり,硬度のばらつきが抑えられることが確認されています.これにより,従来のSGIと比較して,加工寸法の精度が安定し,切削工具の寿命が約30%延び,加工コストの削減にも寄与することが報告されています.
(『鋳造工学』97巻3号掲載)