溶湯の品質評価を行ったときに出た介在物を外部委託で分析すると,アルミニウムカーバイドが検出されました.この物質の混入経路として疑われるものは何でしょうか?

アルミニウム合金溶解炉や保持炉のドロスやフラックス処理をした残灰のバケット,使用済みの黒鉛るつぼの近くでは,カーバイド臭がします.アルミニウムカーバイドはアルミニウム合金の溶解過程で生成します.

黒鉛系部材はアルミニウム合金溶湯と反応しにくく,濡れにくいため,よく現場で使われていますが,黒鉛と溶湯とが反応し,アルミニウムカーバイド(Al4C3)を生成します(1式).セラミックスとしての黒鉛はアルミニウム溶湯とは濡れにくいのですが,反応しやすいことが知られております.

また,耐久性が高いため,一般的に使われるカーボンボンド黒鉛るつぼには,炭化けい素(SiC)が含まれ,SiCも溶湯と反応し,Al4C3を生成します(2式).溶解温度が高い程,保持時間が長い程,Al4C3の生成反応が進み,生成量が多くなります.炭素の供給源としては,リターン材に付着した油や塗料などの種々の有機化合物もあります.

密度は2.36 g/cm3(室温)と溶湯密度に近いため,他の部材表面に生成し,炉壁や炉底にあったものが,フラックス処理や炉内の清掃などによって溶湯を撹拌したときに溶湯に巻き込まれ,介在物として出た可能性があります.

    4Al+3C=Al4C3        (1)

    4Al+3SiC=Al4C3+3Si   (2)