熱間圧延用ロール材のように,巨大で硬い材料は,修理や廃棄処理がどのようにして行われているのですか?

 熱間圧延用ロールや鉱物粉砕用ミル部材などに用いられる材料は,高合金系の白鋳鉄が用いられています.一般的な白鋳鉄はレデブライトが分散した組織となりますが,厳しい摩耗環境下では,さらに高硬度な炭化物を基地中に分散させて,耐摩耗性を向上させています.添加される合金元素はFeより炭化物形成能の高いCr,V,Mo,W,Nb等が用いられ,各元素により生成される炭化物はM7C3(Mの主要元素はCr),MC(MはV,Nb),M2CやM6C(MはMo,W)となり,炭化物硬さもM3Cの1300HVに対して,1600〜2800HV程度まで上昇します.

 高合金白鋳鉄はこれらの元素総添加量が20%以上にもなるので,製造コストも原材料価格に左右されます.したがって,製造時には廃棄されるロールや部材を回収,購入し,原材料として再溶解することが多いようです.

 製造時に現れた欠陥の補修は,鋳鋼品で行われるような補修溶接は基本的にできないので,研削等により欠陥除去しています.使用中の補修に関しては,例えば,熱間圧延用ロールの寿命は2〜3年程度であり,その期間は研削により表面荒さを維持しつつ,許容限度寸法になるまで使用されています.また近年では,ロール軸部分(鋳鋼)だけを残して,圧延品と接触するロール部分を鋳造で再形成する再生ロールというリサイクル技術も開発されています.

(『鋳造工学』93巻7号掲載)