球状黒鉛鋳鉄のヤング率は何GPaですかと聞かれました.これはどんな時に必要で,その値も教えて下さい.
球状黒鉛鋳鉄のヤング率(縦弾性係数)は片状黒鉛鋳鉄の80〜130GPaに比べて大きい値であり,140〜170GPaの範囲にあると言われてい ます.
一般に鋼のヤング率は200〜210GPaなので,球状黒鉛鋳鉄は鋼の約70~80%と言えます.鋳鉄ではヤング率は,基地組織や強度よりも黒鉛の 形状及び分布状態の違いに大きく影響を受けると言われております.
そのため、黒鉛球状化率が低下すると黒鉛縁の応力集中やひずみが増加することでヤング率 が低下すると言われております.ヤング率は組織的には不敏感な性質であり,熱処理によって組織や強度など変化させても,ほとんど変わることはありません.
ヤング率の測定方法は様々な方法があり,静的もしくは動的に求める方法が知られています.測定方法により,原理,測定温度範囲,試験片寸法等異な るため,適切な方法を選定する必要があります.
静的試験(機械的試験法)には,引張試験,圧縮試験やねじり試験があり,ヤング率は応力−ひずみ線図の傾き から算出されます.しかし,試験片の品質や加工精度の影響が大きく,測定結果には若干の誤差が含まれます.
一方,動的試験では静的試験に比べて小型試験片 や脆性材料の測定も可能です.動的試験の代表的な測定方法として,振子法,共振法,超音波パルス法があります.共振法は試験片に機械的または電気的に強制 振動を与えて共振周波数(固有振動数)を計測し,この共振周波数からヤング率を計算する測定法です.
また,超音波パルス法は縦波用振動子及び横波用振動子 を用いて約1〜20MHzの超音波パルスを試験片に伝播させ,試験片内を伝播する縦波及び横波の伝播速度からヤング率及び剛性率を計算する方法です.
ヤング率は材料の外力に対する変形量の計算には不可欠なものです.例えば,負荷されている応力とヤング率から伸びやひずみを算出することができま すし,梁の撓みを求めたり,柱の座屈荷重を求めたりする時にも用いられます.
構造用部材として用いられる場合,ヤング率は安全な設計を行うための重要な値 の1つであると言えます.