生型造型において,よく月曜日の朝の砂は暴れると呼ばれるといわれますが,砂自体に何か起こっているのでしょうか?
生砂造型ラインで『週末から週明けにかけて砂があばれる』と呼ばれることがあります.
週末など稼働時間終了間際ぎりぎりまで注湯した後解枠せずそのままにして操業を終了した場合,週明けのライン稼働開始時に生砂の湿態性質が不安定で管理値内におさまりにくくなる場合があります.特に冬季や雨季にはその傾向が高くなります.
生砂の湿態性質は水分の制御に依存しています.注湯後長時間枠内で製品とともに放置されていた鋳型の生砂は,徐々に周囲環境の気温まで下がっていきます.製品を取り囲む鋳型の水分は水分凝縮層を形成し,製品に接する生砂の水分は非常に低くなり,一方水分凝縮層付近では過飽和状態にまで水分が高くなった過剰水分層が出来てしまいます.湿度が高かったり,外気温が低く結露しやすくなる環境では尚更です・寒冷地では冬季長時間放置しておくとこの過剰水分層が凍結し,解枠が出来なくなってしまうといった現象に見舞われてしまうことさえあり,冬季には必ずラインの稼働を続けて解枠までを済ませてしまわなければならいといったことも起こります.長時間枠内に放置された生砂には,製品に接して高温に曝(さら)され水分がほとんどないまたベントナイトなどの粘結材は焼成された状態の箇所,水分凝縮層が発達した過剰水分層ここでは粘結材はほとんど加熱されていない箇所,そして全く熱の影響を受けていない箇所が形成されます.通常に解枠された状態ですとごく短い時間で形成された過剰水分層の箇所は全体的には僅かな割合です,搬送されていくうちに混じりあって大きな偏りが出にくいのですが,長時間枠内放置されて形成された過剰水分層が塊となって搬送されると混じり合わなくなります.造型ラインの設備構成にもよりますが,解枠後の砂が冷却され,この塊が崩れたときにも残っている水分量のバラツキが大きくなり,調砂工程で添加すべき水分の調整が難しくなってきます.結果として管理値内を大きく暴れることになります.調砂工程では解枠後搬送されてきた砂には塊などのないようにほぐされ,充分に熟成されたことを前提に砂の温度と残った水分をはかりながら水を添加し,粘結材を添加して混練が行われていきますので,水分の過剰な塊によって全体が乱されることになり,暴れていると表現されています.
対策としては,長時間放置した後の解枠時には,(ブロッキング)塊が起きていないか,過剰な水分の塊が搬送されていないかを監視する必要があります.
(『鋳造工学』第90巻6号掲載)