金型が欠けた場合の補修方法はどのように行うのが良いでしょうか?
ダイカスト金型においては,主にSKD61やそれ相当の材料を用いていることから,補修方法としては溶接復元での補修が一般的に行われています.
先ず溶接材としては,マルエージング鋼が一般的です.その理由は,施工後の硬度が低く靱性に富む為,比較的溶接がしやすい事と溶接後の加工が容易な点が挙げられます.
一般的なTIG溶接施工の場合,洗浄→開先加工→予熱→溶接→後熱→加工→完成検査の順で行われます.
洗浄工程では施工部周囲の油脂・溶湯・ゴミ・さび等の溶接欠陥の元となる不純物を除去,開先加工工程では割れや亀裂を完全に除去し同時に鋭角部や極端なへこみ等も削り取り,溶接しやすい形状にします.
予熱工程では,低温割れ予防,変形抑制,残留応力の抑制の為,溶接部付近の温度を200~250℃,金型端部を100℃以上の目安とし,ガスバー ナーで金型全体を暖めたあとに溶接します.溶接終了後は,再度,ガスバーナーにて後熱を施し,急冷防止の為に断熱材で金型を養生,時間をかけて金型を冷却 します.
溶接部位の形状復元には,直彫り加工など適切な方法を選択して行い,加工完了後は修正部位の形状測定や探傷検査などを経て補修が完了します.