鉄鋳造の遠心鋳造方式で,製品に巣穴・ひけ巣が発生するのですがどんな原因が考えられますか? 種類としては、貫通タイプや肉の中に存在する(旋盤などで表面をさらうと出てくるもの)タイプがあります.
遠心鋳造法における鋳造欠陥として貫通タイプは「ブローホール」,肉厚中に存在するタイプは「ひけ巣」,として以下回答します.
「ブローホール」は,金型内表面や型内面に塗布された塗型の水分が,溶湯が注ぎ込まれることで気化(ガス化)し,溶湯が凝固する過程で外面から製品内面に向け肉厚中をガスが通り抜けることで発生します.対策としては金型表面の錆び等異物の除去,塗型材の十分な乾燥,また溶湯温度に対して適切塗型材の選定などがあります.
「ひけ巣」は凝固時の体積収縮により最終凝固層に発生する鋳造傷ですが,遠心鋳造法では鋳型や金型に接触する外面側から冷却され,内面側に向け指向性凝固されるため,最内面層にひけ巣が生じます.しかし,金枠温度が高かったり鋳造肉厚が厚かったりすることによって凝固に時間がかかり,内面側から冷却されることで,最終凝固層が肉厚中央側に移動することもあります.また,凝固時には固相と液相が共存する温度域があり,固液共存域が広い合金などでは,広範囲で同時に凝固核が生成され凝固が進むため,溶湯補給が行われ難く,ミクロひけ巣が肉厚中に発生することがあります.対策としては,鋳造肉厚の削減,回転数の向上,内面に保温材を投入する,などがあります.
(『鋳造工学』94巻8号掲載)