鋳物の化学組成を蛍光X線分析やICP分析装置で簡易・短時間で分析していますが,どのような原理で行われているのでしょうか?
物質は,いくつもの元素の組合せで出来ています.物質にエネルギー(熱エネルギー,電気エネルギー,光エネルギーなど)を加えるとその強さに応じて相変態(固相→液相→気相そして発光)します.この光が何かというと,物質を構成している各元素のスペクトル線(光)が混合したものです.理科の時間に炎色反応の実験で,アルコールランプの炎に金属や金属塩などを付けた白金線をかざすといろいろな色の炎に変化すること,夏の夜空を彩る打ち上げ花火や線香花火の色も火薬の爆発エネルギーで花火に仕込まれた金属や金属化合物の発光なのです.これらの光の色は,各元素が有する固有の輝線スペクトル線(光)によるものです.
この原理を利用したのが固体発光分光分析,蛍光X線分析,ICP分析,原子吸光光度分析などの機器分析装置です.これらの装置は,分析する物質に高エネルギーを加え物質を構成する元素を発光させる部分,光を各元素のスペクトル線に分解(分光)する回折格子(一種のプリズム),分光された各元素のスペクトル線を受光して電気信号に変換するのが光電子増管やCCD素子,検量線そして結果を表示する部分から構成されています.強いスペクトル線(光)の光度は,含有量が多い程を強くなるので電気信号も強くなります.予め入力されている検量線(曲線)は,ある元素の含有量変化させた試料を化学分析によって測定しy軸に,それぞれの含有量の試料のスペクトル線の強度を機器分析装置で測定しx軸にプロットしたものです.
以上の様な原理で各元素の光の強度と含有量から成る検量線から瞬時に含有元素の含有量を算出・表示することが出来るようになっています.
※なぜ輝線スペクトル線が出るのかは,炎色反応,スペクトル線などをキーワードにWeb検索されると良いでしょう.スペクトル線は可視光線(赤の波長:760〜830nm〜紫の波長:360〜400nm)とは限りませんが,機器分析装置は殆どの元素のスペクトル線を分光,受光出来るようになっています.目に見えない電磁波の波長は紫外線→放射線と短くなっていくのですが,昆虫や放射線検出器は捉えることが出来ます.Li深赤色,Na黄色,K淡紫色,Cu緑色,Ca橙赤食,Sr紅,Ba黄緑色など
(『鋳造工学』89巻10号掲載)