鋳鉄にはどのような種類が存在して,どのように使い分けをしているのでしょうか?(質問者:LICCA)

 鋳鉄の分類は,鋼に対する広義的な場合の鋳鉄という分類のほか,狭い意味で鋳鉄と呼ぶ場合は可鍛鋳鉄や球状黒鉛鋳鉄などに対して,単にねずみ鋳鉄(片状黒鉛鋳鉄)を指すことが多いです.表1に古い図書に載っている分類例を示します.表1に示すように,鋳鉄の名称は実に多種多様であって,同じ名称を人によって異なって使用することがあるので注意しなければなりません.また,最近の著書2)には黒鉛組織,基地組織,その鋳鉄の特徴を加味した鋳鉄の分類法があり,興味のある方はそちらの図書を参照されることを勧めます.

 さて,鋳鉄はどのように使い分けをしているかとのお話になると,まずは強度や鋳造性,経済性(コスト)などによって使い分けされています.鋳鉄の使用が圧倒的に多い自動車の例でいうと,足回り部品の中の,サスペンション部品,駆動(ハブ,デフ,キャリア)およびシャシ部品(各種ブラケット,ビーム,サポート)では高強度・高靱性のダクタイル鋳鉄が多く使われています.また,同じ足回り部品でブレーキロータやドラムなど,エンジン部品でシリンダーヘッドとブロックなどでは一定の強度特性の他,熱伝導性や減衰性,耐摩耗性,そして良好な鋳造性および切削性を兼ね備えている片状黒鉛鋳鉄が用いられています.さらに,用途によって機能および経済性から上記両鋳鉄材の中間特性を有するCV黒鉛鋳鉄が使われる場合もあります。詳細な写真付実例は図書2)を参照ください .

1) 鋳鉄の材質 :(社)日本鋳物工業会編,コロナ社(1962)2

2) 新版「鋳鉄の材質」公益社団法人 日本鋳造工学会編,(2012)6,180

表1 鋳鉄の分類と名称
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