鋳鉄材料の規格は引張強さや伸びで規定されていますが, 値を求めるときの有効数字はどこまでですか? 具体的に教えてください.

引張試験は特殊な場合(規程の試験片が採取できないなど)を除いて,基本的にはJIS Z 2241「金属材料引張試験方法」に則った方法で実施する必要があります.一般に引張試験結果は, 材料規格に規定のない場合は, 少なくとも次の精度で丸めなければならない(JIS Z 8401 数値の丸め方)と定義されています.

強度の値:MPaの整数に丸める

破断伸び(%):整数に丸める

また,各々の原断面積を求めるためには,規定寸法の少なくとも0.5%(JIS 4号試験片の場合,0.07mm)の数値まで測定し,標点距離は規定の寸法の0.4%(JIS 4号試験片の場合,0.2mm)の精度で測定するという規定があります.

応力を算出するための試験片断面積の測定には,ノギスやマイクロメータを使用します.一方,荷重については,最近はロードセルからデジタルデータで計測することが多いようです.つまり,試験片寸法の測定値と荷重の有効数字で強さ(応力)の精度が決まります.いずれも有効数字3桁は保証されていると思いますので,1MPaの精度で表記すれば十分かと思われます.一方,伸びや絞りを求めるには,破断後の破断面を突き合わせた状態で標点距離あるいは最小部の断面寸法を測定します.仮に精度の高い測定器具を使用したとしても,突き合わせた状態で測定していることから,厳密にその精度を持った正確な測定ができているとは言えません.そのため,伸び,絞りの表記としては,1%の精度で算出します.

したがって,強さや伸びを求める際は,まず測定される値の分解能が基準を満たしているかどうかを判断した上でそれぞれの値を測定することが必要となります.

(『鋳造工学』91巻8号掲載)