鋳鉄特有の鋳造欠陥にはどんなものがありますか? どのような機構で発生し,どの程度の大きさになりますか? また,発生しやすい部位を教えて下さい.
日本鋳造工学会編「鋳造欠陥とその対策」では,鋳造欠陥を発生箇所や原因により,A)寸法・形状不良,B)ひけ巣,C)ガス欠陥,D)割れ,E)介在物,F)外観不良,G)中子不良,H)鋳肌不良,I )組織不良,J)破面不良,K)強度不良,L)工業的性質の不足の12種類に分けています.
鋳鉄鋳物ではA)からL)のすべての鋳造欠陥が見られますが,鋳鉄は黒鉛を多量に含有することで他の鋳造材料と異なり,異常黒鉛やチルの晶出が,鋳造欠陥となります.ここでは,鋳鉄特有の鋳造欠陥としてI )組織不良に関するものについてお答えします.
チルは一般的に隅角部や薄肉部のように急速に冷却された場所に発生しますが,逆チルは,鋳物の中心部に炭化物が発生する不良です.特に厚肉鋳物ではMn,Cr,Moなどの炭化物を形成しやすい元素が最終凝固部に偏析することにより,逆チルが発生します.
チャンキー黒鉛は鋳物中心部に発生した少し黒ずんで見える異常黒鉛組織です.チャンキー黒鉛の生成機構については諸説有り明確ではありませんが,過剰なCeやCaやNi,そして過剰なSi添加の場合に発生しています.チャンキー黒鉛の防止には,黒鉛の球状化を阻害するSbの添加が有効とされています.
ウィドマンステッテン黒鉛は,ひげ状の黒鉛が成長した異常黒鉛です.FC250では鉛が30ppm,FCD600では鉛が50ppmを超えると,この異常黒鉛が鋳物全体(特に大物鋳物)に発生します.
フラン鋳型に鋳造したFCDの鋳肌付近(1~1.5mm程度)に球状化不良が発生することがあります.これは,フラン鋳型に用いる硬化剤にSが含まれているため,溶湯中のMgと反応して球状化に必要なMgが不足するために発生します.
(『鋳造工学』87巻8号)