鋳鋼では補修溶接を行うことがありますが,鋳鉄では補修溶接ができないと聞きました.なぜでしょうか? (質問者:TAKE TAKE)

鋳鋼と鋳鉄では,規定される炭素量が異なり,これに伴う組織形態の違いが補修溶接の難易度に大きく影響します.鋳鋼は一般的な鋼と同様にフェライト,パーライト,マルテンサイト等を有する組織形態のため,鋼に適用されている方法での補修溶接が可能です(適用可能な条件の制限あり).
一方,鋳鉄では黒鉛と基地組織で構成された鋼とは異なる特有の組織形態を呈し,この黒鉛組織の存在,すなわち高い炭素含有量が溶接を困難とする主要因です.溶接時は急速な熱サイクル(加熱+冷却)に晒されます.そのため,溶接金属部(溶接時に溶融凝固した箇所)では黒鉛化が困難となりチル化しやすく,主としてレデブライト組織を,溶接熱影響部ではレンズマルテンサイト組織を呈しやすくなります.したがって,溶接部全体で硬度が極めて高い組織となるため,脆化しやすく,割れがしばしば発生します.また,COガスによるブローホールの発生など,一般的な鋼の溶接とは異なった鋳鉄特有の問題が生じます.実際の鋳鉄の補修溶接では,黒鉛化の促進や硬化組織生成の抑制のため,Ni系やFe-Ni系溶接材料(JIS Z 3252で規格)の使用や冷却速度の低減を目的とした予後熱の適用などが行われています.

(『鋳造工学』95巻8号掲載)