黄銅は金型鋳造ができるのに青銅では難しいのはなぜですか.

生産性の向上,作業環境の改善といった観点から青銅の金型鋳造は昔から望まれてきましたが,多くの問題があり,実用化は進んでいません.

青銅系の合金は黄銅系の合金と比較して凝固温度範囲が広く,粥状凝固する合金です.凝固温度範囲が狭く,表皮形成型の合金である黄銅系の合金と比較して,固液共存の状態が長く続きます.そのため固液共存中に熱収縮が金型に拘束されると,引張荷重を受け,凝固割れを生じやすいという問題があります.

凝固中,デンドライトが発達するためひけ巣に対する押し湯からの溶湯補給も難しく,湯流れ性も黄銅系の合金と比較して良くありません.金型鋳造の場合,冷却速度も早いため,押し湯が効かずミクロポロシティや湯回り不良が問題となります.また溶解温度についても,黄銅系の合金と比較して,青銅系の合金は高く,金型寿命の問題もあります.

これらの問題に対して,金型材質の検討や,CAEによる熱流動凝固解析を利用した青銅合金の金型鋳造用の方案の検討等,更なる研究,技術開発の進展が待たれます.

(『鋳造工学』91巻10号掲載)