Fe-C系状態図で黒鉛の晶出量を求めると数%ですが,顕微鏡組織から判定すると10~15%に見え,文献にもそう書かれています.この違いはなんですか?

Fe-C系状態図における黒鉛晶出量は,重量%で表示されています.一方,顕微鏡組織における黒鉛晶出量は体積%もしくは面積%で表示されています.よって,状態図の重量と顕微鏡組織での黒鉛体積%の間には,近似式で計算すると,式(1)~式(3)の関係が成り立ちます.すなわち,顕微鏡組織で見られる黒鉛の体積率%は,状態図での黒鉛晶出量の3.5倍の値になります.

黒鉛の密度(g/cm3)=黒鉛の重量(g)/黒鉛の体積(cm3)                       式(1)

(黒鉛の体積/鉄の体積) =(鉄の密度/黒鉛の密度)×(黒鉛の重量/鉄の重量)   式(2)

黒鉛体積率%   ≒ (7.87/2.25)×黒鉛の重量比%
                    ≒ 3.5×黒鉛の重量比%                                     式(3)

参考のために,図1と表1に,温度低下に伴う黒鉛晶出量の変化を示します.共晶温度付近での黒鉛晶出量は2%程度で,常温になると4%程度になります.これを3.5倍した値を,表の下に示しております.黒鉛面積率は10~15%になっており,質問通りになっています.

 

図1 温度低下に伴う相成の変化

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献:菅野利猛:鋳造工学,Vol.85(2013)P708-718

(『鋳造工学』91巻9号掲載)