ねずみ鋳鉄FC200(JISG5501)で,別鋳込み供試材の規格がφ30に制定されているのは機械試験に使用するためでしょうか? 8B試験片にてφ20で鋳造し,φ12.5で引張試験を行うのは間違っていますか?
鋳鉄の引張強さは黒鉛量,炭素飽和度(Sc),肉厚などによって変化します.試験片の直径が小さい場合は,その鋳物の冷却速度が大きなり,引張強さは増大します.そこでJISなどでは,片状黒鉛鋳鉄の標準強さは直径30mmの試験の値で表示しています.また,炭素飽和度による引張強さの基準値としてσnを求め,実際に求めたφ30の試験片からの引張強さをσtとし,これとの比率をとって,成熟度RG=(σt/σn)×100を求めています.試験片の肉厚をφ30と統一することで,成熟度が100%より大きいほど材質が良好と判定できます.
φ20で鋳造した試験片の引張強さは,φ30で鋳造した試験片の引張強さよりも大きな値となるので,その場合の使用用途としては,規取引先との間で,「引張試験片は,φ20に鋳造した別鋳込み供試材とする」などと取り決められているような場合が想定されます.
参考文献:新版 鋳鉄の材質,日本鋳造工学会(2014)35-36
(『鋳造工学』90巻12号掲載)