ダイカスト用のプランジャチップ潤滑剤にある種の粉体の潤滑剤を用いるとある種の油性の離型剤を用いた場合よりもADC12アルミニウム合金ダイカストの機械的特性と信頼性が優れる,という講演が3月10日名古屋で開催された「ダイカストの高品質化」シンポジウムでありました.粉体潤滑剤とはどのようなものか,もう少し詳しく教えて下さい.

3月10日名古屋での「ダイカストの高品質化」シンポジウムにご参加頂きまして有り難うございます.

簡単に申し上げますと,粉体潤滑剤(離型剤)とは,タ ルク(滑石),グラファイト(黒鉛),金属石けん,ワックス,珪藻土,h-BN,雲母などの粉末を混合したものです.

配合の比率によってチップの潤滑性能 と溶湯からスリーブへの熱伝達係数(熱の伝わり方)が変化します.たとえば市販品にはグラファイトとタルク,ワックスからなるものがあるはずですが,これ を1平方メートルあたり2グラム程度塗布しますと,ある種の油性の潤滑剤に比べて熱伝達係数が数分の1になることが測定の結果分かっています.スリーブの 温度を下げる効果もあります.

何社かのダイカスタやカーメーカは,この種の粉体潤滑剤を使用しています.国内では㈱アーレスティの青山氏がこの種の粉体離 型剤(チップ潤滑用ではなく金型キャビティ面塗布用)の開発において草分け的な存在です.青山氏は熱伝達係数の測定法も提案しており,私も青山氏の文献を 見て粉体が湯で押し流されないように多少改良をして熱伝達係数を測定しました.

しかし普及が限られている理由があります.個人的な見解ですが,例えば開発 セクションで良好な結果が得られても,量産時には粉体の吐出の安定性や,付き回りの均一性に問題が出たり,チップ潤滑性能が不足したりで現場泣かせになる ことがあるのでご注意下さい.

下記の文献などご参考に頂ければ幸いです.また当学会のダイカスト研究部会(神戸洋史部会長(日産自動車㈱))にご参加を頂 ければ幸甚です.

2000年の日本ダイカスト会議論文集JD00-11 Journal of Material Processing Technology, 130-131(2002),pp 289-293 青山俊三ら,鋳物, 64(1922),383