窒素ガスによる欠陥は, 欠陥内部にデンドライトが確認されますが, なぜデンドライトが存在するのでしょうか. また, 窒素ガスによる欠陥は引けと同様の特徴を有しますが, 見分け方はありますか?

 窒素欠陥は鋳鉄溶湯に過飽和に溶け込んだ窒素が, 溶湯の温度が下がるにつれて排出されるために起る図1に示すような欠陥です. デンドライトが出る理由は, 溶湯の温度が下がり, デンドライトが成長するにつれて, 残された溶湯部のN量が高くなり, 最終的にNを固溶できなくなって, N₂として窒素を放出するために, デンドライトが見られる欠陥となるためと考えられます.

図1 窒素欠陥例(ひび割れ状ピンホール)[日本鋳造工学会:鋳造欠陥とその対策(2006)P66]

 窒素欠陥は, 凝固の早い時期(共晶以前)に起るので, 窒素欠陥の穴の周辺の黒鉛は穴内部に拡散して見られず, 結晶質の黒鉛が穴内部に張り付いているのが見られます. ひけ巣と見分ける方法としては, ①小さいギザギザの穴が, 点在しているのか? ②最終凝固部でない部分にも出ているか? ③組織観察を行うと図2に示すような凹凸のある芋虫上の片状黒鉛が一部に見られることがあるか?(研磨技術が必要)などで判断が可能です. その他としてCEメータの中心部にひけ巣のような窒素欠陥があるか(熱分析曲線のθが異常に大きい)? カントバックTPの放電痕に異常があるか? ガス分析装置の分析でNが100ppmを越えているか? などによる判定も行います.

図2 窒素欠陥の周辺の凹凸がある黒鉛(上手に磨かないと凹凸が出ない)

 
 窒素欠陥は主にFC材で起こります. FCD材で起こることは私の知る限りではありません. これはFCDではMg₃N₂によりNが固定されることが原因と考えられます. 各種溶湯は通常は, 大気(空気)中の酸素や窒素及び水素などのガスと化学成分的に平衡状態を保っています. 電気炉のFC材で窒素欠陥が起こる原因のほとんどが, 溶解後期におけるNの高いピッチコークスの添加が原因のようです. 電極屑と思っていた黒鉛が, 実はピッチ系だったと云った事で起っているようです. 部分的に窒素欠陥が出る場合は, 鋳型(シェル板や塗型または糊など)から窒素が入ることがあるので注意が必要です.
(『鋳造工学』95巻2号掲載)