鉄材の湯流れ性がCE値の違いで変化することを現場で経験しました.なぜでしょうか? また,湯流れ性は一般にどのように測定して判断するのでしょうか.

湯流れ性(流動性)は,鋳込温度が高くなれば凝固時間(流動寿命)が長くなり,その間に流れる距離も長くなります.過熱温度(=鋳込温度-液相温度)と流動性との間にほぼ直線関係が成り立つことが,実験的に確かめられています.鋳鉄の場合,CE値の違いによって液相温度が低下すれば,鋳込温度を一定に保っても実質的な過熱温度が高くなり,流動性が増加することになります.流動性試験では,一般的に薄肉の試験鋳型に溶湯を鋳込んで自由に流れさせ,凝固によって停止した時の長さをもって流動性を表します.渦巻流動性試験鋳型が流動性を調べるためによく用いられていますが,これは流動溝が鋳枠の中に小さくまとめられていることや鋳型の水平度の影響が小さいためです.こうして得られた値は溶湯と鋳型の性質だけでなく,鋳型の形状,湯口方案などにも依存するので相対的な値ですが,流動性とは本来そういうものなのです.なお,流動性試験を行う時の注意事項として,1)鋳型条件,特に試験片部の肉厚と表面状態を一定にする.2)流入状況を安定にする.3)鋳込温度を正確に測定する,など細心の注意によってばらつきを小さくし精度をあげることが可能となります.

(『鋳造工学』90巻11号掲載)