鋳造時に発生する欠陥として,割れがありますが,高温割れと低温割れの違いや原因を教えてください.

 高温割れや熱間割れといわれている割れは,凝固が完了する前に凝固収縮が型や鋳物自体の形状に起因して拘束されることで発生します.局所的に凝固が遅れる場合には,すでに凝固完了した部分が,最終凝固部を引張ることになるため割れやすくなります.溶接分野では通常,凝固割れといいます.
 鋳鉄では凝固時に体積膨張するために,凝固割れを発生することは皆無と言えるでしょう.Si を共晶組成程度含む鋳造用のアルミニウム合金についてもSi を含まない合金よりも凝固収縮率が小さいため,凝固割れが発生するケースは少ないです.また共晶組成の合金は凝固中にデンドライトが発達することが殆どないため押湯から最終凝固部への溶湯の補給がされやすく,言い換えれば凝固収縮部へ溶湯が補給されやすいため凝固割れは発生しにくいと言えます.
 鋳鋼,Si をほとんど含まないアルミニウム合金,Cu-Sn 系の青銅合金については,鋳鉄やAl-Si共晶組成を基本とする鋳造合金に比べると凝固収縮率が大きく,かつまたは,デンドライトが発達しやすいため押湯が効きにくく凝固割れが発生しやすくなります.
 冷間割れは凝固完了後に,合金の線膨張係数に起因する鋳物の収縮が,型や鋳物自体の形状に起因して拘束されることで発生します.
 金型鋳造では砂型鋳造よりも型による凝固収縮の拘束が発生しやすいため凝固割れも冷間割れも発生しやすくなります.冷間割れについては,凝固完了後,可能な限りゆっくり冷却して鋳物内の温度差による熱応力の発生を抑制し,型内焼鈍効果で熱応力を低減させることで抑制可能でしょう.型の拘束が原因の場合は,型から出すことも有効ですが,型から取り出すことで冷却速度が上がることは逆効果になるでしょう.

(『鋳造工学』95巻6号掲載)