黄銅を溶成する時に白煙(酸化亜鉛)が発生します.特に,亜鉛を加える場合に多く発生します.この白煙を減らす方法を教えてください.
亜鉛含有量の多い黄銅や高力黄銅の溶解おいて,通常溶落直後に亜鉛の添加(亜鉛損耗量:1~2%と言われている)と出湯前の炉前分析結果による成分調整の為に亜鉛の添加が行われてます.もし,溶落直後に添加する亜鉛量(溶解損耗分)を正確に添加すれば,炉前分析結果は管理内に収まるので,成分調整の為に亜鉛添加は不必要になり,白煙が生じる作業が無くなります.
では,どの様な管理と作業方法にすれば,正確な添加量が把握できるのか?
まず,第一に,亜鉛含有量を目標値±0.25%以内(出来れば許容範囲は狭いほど良い)に管理する事.これによって溶解毎に使用する材料(インゴット,返り材,切粉)のばらつきを少なくする事が出来ます.次に,正確な溶解損耗量の把握と作業方法です.以下が酸化亜鉛(白煙)の発生を抑えるお勧めの溶解手順です.
1.配合材料
インゴット,返り材,切粉の比率はある程度一定にしておく.
2.溶解
インゴット,返り材及び切粉を投入し,溶解.
2.1 溶落時点での処理(損耗量に見合う亜鉛の添加)
完全に溶落した時点(溶湯温度:液相線温度∔約20℃程度)で,溶湯表面を荒引切粉(スコップ2杯程度)で覆い,その上に予熱してある亜鉛地金(例えば1.5%)を静かに載せ,素早くホスホライザーで溶湯中へ挿入,若しくはホスホライザー内に亜鉛を投入した後,溶湯内に挿入.その後,分析用試料-①を採取しておく.
2.2 再昇温での処理
溶湯表面やるつぼ壁の酸化物を除去した後,溶湯表面をゼオライトで被覆し,昇温.目標温度まで昇温した後,分析用試料-②を採取.分析結果が管理内であれば,出湯可能である.
尚,被覆が困難な場合は,無被覆でも可能であるが,損耗量が多くなる.この作業方法で数ロット溶解を行えば,ある程度正確な溶解損耗が把握できるはずである.
分析用試料-②の亜鉛値が低ければ,亜鉛を添加し,調整する.その際,溶湯表面を被覆したゼオライトが仮焼若しくは焼結しているので,被覆層の表面を一部壊し,その部分に荒引切粉をスコップ1,2杯程度で被覆してから必要量をホスホライザーで挿入し,溶湯表面が乱れないように攪拌.再度分析試料を採取し,管理範囲内である事を確認の事.
亜鉛値が高ければ,純銅(ピカ線)若しくはCu-10%Zn合金を添加し,調整する.
その際の方法は,上述と同様である.
尚,当学会ホームページより”J-STAGE”に入り,第49巻第4号”実操業における青銅溶湯からの金属フュームの発生とその抑制”を検索,参照してください.
(『鋳造工学』93巻4号掲載)