3Dプリンター積層造形法に用いられるアルミニウム合金にはどのような種類がありますか.また,一般の鋳造合金と異なる点はありますか.
積層造形法では, 2次元スライスデータに基づいて金属粉末にビームが照射されます.局部溶解・瞬間凝固と粉末供給が繰り返されることで,3次元の複雑な製品が形成されます.積層造形法では1000℃/s以上の冷却速度を示すので,微細な化合物や過飽和固溶体が生成されるという組織の特徴があります.
現状は,チタン系合金やニッケル系合金では既存材料と同等の合金粉末材料が使用されています. アルミニウム合金も同様で,ダイカスト合金と類似したAl-10%Si-0.4Mg合金が多く使用されています.ただこの合金の場合,積層中の残留応力を低減するために,基盤プレートを200℃に加熱しながら造形することで,過時効になって約300MPaの引張強さになります.これに対して,T5処理によって約500MPaの高強度を示すScalmalloy合金(Al-4.5%Mg-0.7%Sc系)が最近欧米において報告されています. 日本国内においては, 約450MPの高強度を示すAl-7%Si-0.7%Mg-1.5%Mn系合金や実用合金の1.5倍の高温強度を示すAC8A+2%Fe合金が注目されています1).
【参考文献】
1)安達充,小岩井修二:鋳造工学91(2019)60
(『鋳造工学』92巻7号掲載)