Vol.94No.10 九州支部YFE活動報告
九州支部でのYFE活動は,「子供いもの教室」と「学生工場見学会」をそれぞれ年に1回ずつおこなっています.昨今のコロナ禍の中でイベントを控えてきましたが小規模での実施は可能な状況となってきました.今回は寺子屋サークルを運営する大学生とコラボレーションした「子供いもの教室」について報告します.
小雨の降る2022年6月5日の日曜日,子供たちが保護者と大学生に連れられて九州大学伊都キャンパスに到着しました.到着するなりの子供達の元気の良さに面食らいながらも座学の部屋へと案内します.
事の始まりは本学の学生から届いた1通のメールでした.「子供達に鋳造を体験させてあげたい」.読んでみると地域の子供たちを集めて寺子屋サークルを運営しているとのこと.科学実験や魚捌き教室などの体験も行っているとのことで,その中で鋳造を扱いたいという内容でした.どうも一昨年のオンライン講義全盛期の中,本学工学部が学部1年生を対象に実施した研究室体験にて筆者の班で錫の鋳造を体験した学生のようで...なかなか大々的に鋳物教室を開催できない中で少人数であれば可能かと思い,快諾しました.
参加者は,下は小学1年生から上は小学4年生の子供たち7名,保護者4名と引率の大学生4名の計15名でした.最初に「鋳造って何?」というところから座学を始め,身の回りにたくさんの鋳造品があることの説明や,体験で使うピューターの主成分である錫が何℃で融けるのか等をクイズ形式で聞いていきました(小学生は何というか純粋で,説明の最中でも疑問に思ったことはどんどん口にしていきます.最近の大学生にも見習ってもらいたいものです).その中で銅やアルミの融点を聞いてみると,驚くべきことに大体近い温度を答える子供がいました.何で知っているのか尋ねると「ドクタースト〇ン(漫画)で読んだ!」とのこと.
30分程度の座学を終え,皆で実験室に移動していよいよ簡易砂型鋳造の体験開始です.最初に作りたい型をフィギュア,貝殻,メダル等の中から選びます.その時点でワーワーと既に楽しそうです.お父さんもどれにしようかと悩みます.その後,各自に用意された容器にペトロボンド砂を詰め,それぞれの型を押し込み,周りを突き固めます.この作業も楽しいようで,一心不乱に突いている子が多かったです.慎重に型を抜いたら,大学院生がピューターを融かしているところに持って行きます.大同大学で行われた全国講演大会でのこども鋳物教室を見学した経験から,溶解と注湯はアクリル板で仕切ったブースにて行いました.融けた金属を見るのも初めてのようで自分が作った砂型に注がれる様子をアクリル板越しに食い入るように見ていました.十分に冷めてから大学院生が水を張った洗面器に仕上がりが見えないように裏向けにして返します.歯ブラシで砂を落としてもらうのですが,ひっくり返して表を見た瞬間に「オォー」,「ワァ」という声が起こります.砂を落としたり角を磨いたりしてもらいながら「...もう一回やりたい人いますか?」と聞くと「ハイ!ハイ!」と全員が手を上げました.どれくらい楽しんでいるのか把握しかねていたのですが,小学生たちはかなりハマったようです.引率の大学生も参加しながら第2ラウンドを行い,無事に子供いもの教室を終えることができました.
その後の反応を聞くと,引率されて参加した子供は家に帰るなりどれだけ楽しかったかをずっと親に話続けていたそうですし,アンケートの結果も「出来上がった時の達成感がすごい!」「型作りも面白かった」「きれいな物ができた!」「鋳造のことをもっと知りたくなった」「またやりたい」等,非常に好評でした.そのままの気持ちで大人になってもらいたいと思った次第です.
今回はかなりの少人数で,各自の反応を拾いながら実施することができました.今後対面イベントがどんどん可能になっていった際にどれだけ参加者満足度を上げていけるのか,考え物です.
連絡先
(公社)日本鋳造工学会 九州支部YFE
森下 浩平
〒819-0395 福岡県福岡市西区元岡744
九州大学 工学研究院 材料工学部門
TEL:092-802-2956
E-mail:morishita.kohei.853(at)m.kyushu-u.ac.jp
*(at)を@に変えて送信ください.