鋳鉄に加熱・冷却を繰り返すと鋳鉄寸法が少しずつ大きくなる現象を鋳鉄の成長(生長)と云います.

片状黒鉛鋳鉄の寸法変化の方が大きいですが,球状黒鉛で も起こります.鋳鉄を加熱した後に元の温度に戻しても鋳物寸法は元に戻ることはなく,不可逆的な現象として知られています.特にA1温度(共析変態温度) 以上に加熱されると成長量は大きくなりますが,A1変態以下の温度でも成長が起こります.

一般にパーライトがフェライトと黒鉛になるとセメンタイトの密度 よりも黒鉛の密度の方が小さいので鋳鉄の寸法は大きくなりますが,鋳鉄の成長はこの現象とは異なり,相変態がない場合でも起こります.

成長の理由については,「酸化説」,「き裂説」,「ガス説」,「黒鉛不可逆移動説」などが提案されており,長岡金吾による「黒鉛不可逆移動説」が最も支 持されております.この説によると,鋳鉄中の黒鉛は加熱によって減少するが,黒鉛はポーラスになる(長岡ら:鋳物 49(1977) p.742-746)ことで黒鉛サイズにほとんど変化は無く,そして冷却によって黒鉛は増加するがポーラスになった部分を埋めることなく既存の黒鉛が粗大 化するかマトリックス中の別の場所に析出すると説明されております.

成長に影響する因子としては加熱・冷却の温度と速度,組成,雰囲気,黒鉛組織が知られています.成長によって鋳物の寸法は変化すると同時に強度が低下し てしまうので,あまり歓迎されない現象ではありますが,黒鉛がポーラスになるので減衰能が向上するという良い所もあります(相馬ら:鋳物 55(1983) p.199-205).