鋳鉄を鋳肌のまま使用する場合と表面仕上げを施した場合では,強度にどれほどの差がありますか?

鋳鉄の鋳肌には砂との焼付きによる黒皮酸化層や表面での欠陥(巣や介在物,あるいは異常組織)などが存在します.さらに鋳肌の表面粗さは不均一であり,その凹凸が著しい場合には応力集中による影響を考える必要もあります.引張強さはそれらの要因があっても,粗さの凹凸が極端に大きくない限りはあまり影響しませんが,伸びは大きく低減します.つまり,ねずみ鋳鉄の強度には鋳肌はあまり影響しません.球状黒鉛鋳鉄では鋳肌付き試験片と機械加工試験片の応力-ひずみ線図を比較しますと,弾性域の範囲で両者は大きく相違しませんが,塑性域の範囲では鋳肌の影響を受けて塑性変形能が極端に低下します.たとえば,6号けい砂程度までの粗さ(Rz=250μm以下)では機械加工試験片に対して,鋳肌付き試験片の引張強さは90%以上を確保できますが,伸びは大きく減少して50%程度になることもあります.鋳肌がさらに粗くなれば,両者はさらに低下します.曲げ強さ,衝撃値及び疲労強さは鋳肌の影響がより明確に現れます.一般には後処理としショットブラストが施されますので,その効果もあって鋳鉄の引張強さは鋳肌の影響をあまり受けないと考えて良いです.

(『鋳造工学』87巻10号掲載)