銅合金溶湯中の水素量を鋳込み前に知ることはできますか?

 一般の銅合金鋳物の鋳造において,銅合金の中でも黄銅など亜鉛の多く含まれている合金では,溶解中の亜鉛の蒸発による脱ガス効果があり水素は問題になることは少ないです.また,青銅や純銅においてはフラックスやガスバブリングによる操業条件でガス欠陥をコントロールしているところが多いと思います.

 炉前試験としてはチル試験を行い破面の水素ガス由来の気泡の観察,チル試験片上面の膨らみ具合からガスの量を推定する方法が行われてきました.機器分析としては,不活性ガス中で1g程度の試料を溶融させ,その再発生する酸素・窒素・水素ガスを分析する手法(LECO社)があり,0.1ppm程度の精度(下限値)で分析でき,電線などの伸銅品の溶解時に使用されています.近年では,溶湯中にセラミックスのセンサーを浸漬して起電力を測定することにより水素を分析する手法が開発実用化(TYK社)されています.

(『鋳造工学』92巻5号掲載)