Vol.94No.1 日下賞受賞者紹介(1) 楠本賢太さん

 学会表彰のひとつである「日下賞」は,今後の活躍が期待される若手の研究者・技術者に贈られる賞です.今号から,2021年度に授賞された方々の研究内容や今後の目標等をシリーズで紹介します.第1回目は室蘭工業大学の楠本賢太先生です.

皆様こんにちは,室蘭工大の楠本と申します.この度は,日下賞という身に余る光栄な賞をいただき,さらにはYFEだよりを執筆させていただくことになり,恐縮至極でございます.
清水先生の研究室の門を叩いたことがきっかけとなり,鋳造に携わり,早いもので12年が経過しようとしています.初めて金属の組織を見たとき,成分の違いで組織が異なることに大きな衝撃と感動を受けました(図1参照).部材の耐摩耗性が製品の性能や信頼性を左右し,部材の耐摩耗性は機器の運用経費とも直接関係することから,経済的な点からも摩耗は重要な技術課題となっています.そのため,耐摩耗化を目指した鋳造材料の組織制御や摩耗特性に及ぼす合金元素の影響に関する研究を進めてきました.部材の摩耗寿命延長のため,高合金鋳造材料に着目し,金属材料中の微細な晶出・析出炭化物及び基地組織制御が耐摩耗特性向上に有効であることを実証しながら,材料の強度特性についての研究も進めています.このような内容に関するお問い合わせも大歓迎ですので,お気軽にご連絡ください.

 

 

今後も引き続いて「熱処理による組織制御」,「摩耗」を主軸に,「統合型熱力学計算による新素材開発に関連した研究」を進め,日本のものづくりに関する技術的な問題の解明に実験および理論の両面から力をいれていきたいと思っています.

 近年の工学技術の飛躍的な高度化,様々な分野が融合した複合技術の増加等により,自分一人の知識・経験,研究室所有の設備では対応できないことが多くなってきています.特に,理工学分野横断的な取り組みが必要な課題が増えている中で,様々な分野の研究者の助けやアドバイス受けつつ,独自の知見やアイデアを導入し研究を進める機会は益々増えると考えています.

 最後になりますが,皆様のご指導・ご助言を基に研究を遂行し,受賞に至りました.紙面を借りて,御礼申し上げます.この賞を励みに,また,受賞に恥じないよう,微力ながらではございますが,鋳造分野に貢献できるように日々精進していく所存です.今後ともご指導よろしくお願い致します.

連絡先

室蘭工業大学もの創造系領域機械工学ユニット
楠本 賢太
〒050-8585 北海道室蘭市水元町27-1
TEL:0143-46-5952
E-Mail:kusumoto(at)mmm.muroran-it.ac.jp
*(at)を@に変えて送信ください.