学会表彰のひとつである「日下賞」は,今後の活躍が期待される若手の研究者・技術者に贈られる賞です.2023年度に日下賞を受賞された方々の研究内容や今後の目標等を今号からのシリーズとして,1~3号で紹介します.第1回目は株式会社木村鋳造所の岩見祐貴さんです.

  皆様,こんにちは.木村鋳造所の岩見と申します.この度は,日下賞という名誉ある賞をいただきまして,誠に光栄に思います.YFEだよりにて,執筆の機会をいただきましたので,自己紹介させていただきます.

鋳造との出会い

 私は大学生時代に鉄鋼材料の研究をしていたこともあり,鉄つながりで木村鋳造所の御前崎工場を見学したのが鋳造との出会いでした.当時は鉄のことすら少しかじった程度で,鋳造の鋳の字も知りませんでしたが,溶けた鋳鉄をダイナミックに注湯する光景に圧倒され,そのまま鋳造の世界に足を踏み入れることとなりました.今思えば,ろくに調べもせずに,よく工場見学に行ったなぁと感じますが,その無鉄砲な行動のおかげで鋳造と知り合うことができたと思うと感慨深いものがあります.それから木村鋳造所の開発部にて,かれこれ16年近く鋳鉄材料の研究開発に明け暮れております.

得意分野と生業

 考えるより手を動かす方が得意です.ひらめきを大切に,一流の実験屋を目指して,日々精進しております.実用的なところでは,鋳鉄溶湯の熱分析や接種剤などを用いた溶湯品質の向上などの研究で活動しております.熱分析は,簡便に溶湯品質を数値化できるので,鋳鉄溶湯を扱うにはとても重要だと思います.その溶湯品質を向上させるために行う接種などの溶湯処理も重要だと思いますので,これからも研究を進めていきたいと思います.
 あまり実用的ではないけれど面白いところでは,鋳鉄溶湯の湯面模様も研究しておりました.若かりし頃は,湯面模様を「ゆめんもよう」と呼んでいましたが,どうやら「ゆづらもよう」と呼ぶようだということを学んでから,湯面模様を「ゆづらもよう」と呼ぶように気を付けています.ちょっとした成分や温度,溶湯品質の変化で,湯面に描かれる模様が変わる様子に魅了され,時間を忘れて湯面を見ていたことを思い出します(図1-3参照).
 また,仕事柄,鋳鉄材質の化学成分を変化させて,機械的性質や金属組織を調べることを良く行います.その甲斐あって,鋳鉄材質の基礎は,それなりの知見を積むことができてきたと自負しております.これからは,もっと視野を広くして研究開発に勤しんでいきたいと思います.今後とも,よろしくお願いいたします.

図1 笹の葉の湯面模様

図2 麻の葉の湯面模様

図3 亀甲の湯面模様

 

 

 

 

 

最後に 

 余白ができそうなので,余談を記させていただきます.最近,植物工場が気になっていまして,工場で生産された野菜を近くのスーパーでも見かけるので,たまに購入するようにしています.品質も安定しているように思いますし,虫や土などが付着していないところに魅力を感じます.そこで,近場の伊豆でワサビが有名なこともあり,そのワサビを工場で作ったら面白いんじゃないかと思っていたら,すでに植物工場で栽培されていました.ほかの人が思いつかないことを思いつき,先に実現させるのは,やはり難しいことだなと感じた次第です.

 

連絡先
株式会社木村鋳造所 開発部  
岩見 祐貴
〒411-0905 静岡県駿東郡清水町長沢1157 
TEL:055-975-7053
E-Mail:yuki3(at)kimuragrp.co,jp
*(at)を@に変えて送信ください.