九州支部でのYFE活動は,「子供いもの教室」と「学生工場見学会」をそれぞれ年に1回ずつおこなっています.今回は九州大学伊都キャンパスで行われたオープンキャンパスでの「中高生いもの教室」について報告します.

図1 大学ロゴの鋳物

 九州大学では例年8月の第1週末にオープンキャンパスを開催しており,工学部材料工学科では学生実験室において「レオロジー」「超伝導材料」「熱電変換材料」「凝固を利用したものづくり」など,参加者体験型のデモ実験や素材展示を行っています.本年も8月2日(日)にオープンキャンパスが実施され,多くの高校生や中学生,その保護者の方々にご来場いただきました.これまでは4つのブースを10分ごとにローテーションし,短時間で各テーマを体験する形式をとっていました.昨年までの私たちのブースでは「凝固・鋳造・金属3Dプリンター」に関する概説と,1名のみがオイルサンドとピューターを用いた簡易砂型鋳造を体験し,他の参加者は見学するという形でした.しかし,この形式では鋳造の魅力が十分に伝わらないと感じたため,今年度は初めてローテーションと時間制限から外れ,参加者全員が鋳造を体験できるようにしました.

 体験では,木枠を用いずステンレス容器にオイルサンドを詰め,光造形3Dプリンターで作製した九州大学ロゴや材料工学科ロゴ,本物の貝殻やフィギュアなどの型を押し込み,型を造ってもらったところに筆者が溶融ピューターを注いで鋳造しました.これまで見学のみだった参加者たちが,今回は笑顔で型づくりに取り組み,完成した鋳物を手にして喜ぶ姿が印象的でした.体験後は作品を記念に持ち帰ってもらい,九大志望の高校生が九大マークを選んで鋳込む様子も見られました(1).一方で,思い思いの型を選んで自由に鋳物づくりを楽しむ姿からも,「体験してこそ理解が深まる」ということを改めて感じました.

図2 大学院生による説明と参加者の様子

 また,来場者の中には「業界の人」や「大学教員や教員OB」もおられ,TAが質問されて少し緊張する場面もあり,和やかな雰囲気の中で活発な交流が生まれました.廊下ですれ違った高校生たちが「楽しかったねー,ここ」と話しながら帰っていく姿を見て,実施してよかったと強く感じました.当初は,全員参加型にしたものの,参加しなかった方にも配布できるよう約150個の九大・材工マーク鋳物を事前に準備していましたが,予想以上の参加者の多さで,それらをすべて溶かして再利用し,ようやく数が足りたほどの盛況ぶりでした(2).午前10時から午後3時まで筆者が注湯を続け,最終的に300~400個ほどを鋳込んだと思われます.来年も引き続き,全員参加型で多くの中高生に鋳物の魅力を体験してもらいたいと思います.

連絡先
(公社)日本鋳造工学会 九州支部YFE
森下 浩平
〒819-0395 福岡県福岡市西区元岡744
九州大学 工学研究院 材料工学部門
TEL:092-802-2956
E-mail:morishita.kohei.853(at)m.kyushu-u.ac.jp*(at)を@に変換してください.