
学会表彰のひとつである「日下賞」は,今後の活躍が期待される若手の研究者・技術者に贈られる賞です.2025年度に日下賞を受賞された方々の研究内容や今後の目標等を今号からのシリーズとして,1~3号で紹介します.シリーズの第1回目は,山梨大学の猿渡直洋さんです.
皆様,こんにちは.山梨大学の猿渡直洋と申します.この度は,日下賞という名誉ある賞をいただき大変光栄に存じます.
私は学生時代より,アルミニウム合金鋳造材の熱処理(溶体化処理)に高周波誘導加熱を適用する研究に従事してきました.高周波誘導加熱特有の急速加熱並びに
優れた温度制御性を利用して,従来の加熱装置では実現が困難な特徴的な温度履歴を付与し,加熱・保持に伴うミクロ組織変化と機械的性質の相互関係について検討しました.

アルミニウム合金は電気比抵抗並びに比透磁率が小さいことから,誘導加熱での直接加熱は不向きとされてきました.しかし,2000 kHzという超高周波を利用し,表皮効果を高めることで急速加熱が実現可能となりました.具体的には,AC4CHアルミニウム合金を10×10×50mmの直方体形状に加工した試験片では,目標温度の560℃まで約40℃/sの急速加熱が可能でした.また,高温下における温度制御性も優れており,560℃に到達直後のオーバーヒートはほとんどなく(1℃程度),560℃保持時の温度変動は最大で4℃でした.このような特徴的な加熱を利用して,AC4CH合金の高温・短時間溶体化処理について検討しました.その結果では,従来(535℃)よりも25℃高い560℃の溶体化処理では,分単位の保持で溶質原子が初晶α-Al相中に拡散,固溶することや,それに伴い機械的性質が向上することが明らかとなりました.これらの結果は,溶体化処理の効率化を示唆し,省エネ熱処理技術の確立に向けた有益な基礎データが得られたと考えています.最近では,溶体化処理後の冷却工程に着目して研究を進めています.冷却中に生じるミクロ組織変化の精査を通じて,強度を確保するために必要な冷却条件を明らかにするとともに,将来的には冷却中の組織変化を積極的に利用し,鋳造後の溶体化・時効処理の削減を目指したいと考えています.
また私は,令和7年4月から工学部附属ものづくり教育実践センターの専任教員を務めています.ものづくり教育実践センターでは,工学部の学生を対象に機械加工実習などの教育を行っており,機械系コースでは砂型鋳造の実習も行っています.近年,鋳造実習を行う大学は少なくなってきており,学生が鋳造を学べる貴重な場となっています.そのため,こうした実習は今後も継続し,ものづくり教育の重要な学習機会として残していきたいと考えています.

末筆になりましたが,今回の受賞は多くの皆様に支えられ,研究を遂行できた結果と感じています.この機会をお借りして,研究活動を支えてくださった全ての皆様に御礼申し上げます.今後も鋳造分野に関わる研究及び教育に尽力する所存です.引き続き,ご指導,ご鞭撻をお願いいたします.
連絡先
山梨大学 大学院 総合研究部 工学域 機械工学系(ものづくり教育)
猿渡 直洋
〒400-8511 山梨県甲府市武田4-3-11
TEL:055-220-8095
E-mail:naohiros(at)yamanashi.ac.jp*(at)を@に変換してください.
