第86巻シリーズ「こんなところにも使われている鋳物」

Vol. 86 No. 1「高性能チップマウンター鋳物フレーム」

平成25年度Castings of the Year賞受賞作
株式会社古久根

Vol. 86 No. 2「セメントバッチャープラント用内張りライナー」

平成25年度Castings of The Year賞受賞作
株式会社三共合金鋳造所

Vol. 86 No. 3「チタン製ぐい飲み・杯」

チタンは金属の中で重量あたりの強度が一番強く,また腐食に対しても強いため,ロケットや航空機等に使用されている.

今月の表紙は純チタンを用いてロストワックス法で作られた“ぐい飲み”である.なめらかな形状や細かい模様が再現され,不思議な味わいのある器となっている.

ぐい飲みにするはもったいないチタンだが,ぜいたくな気分でちょっと一杯,ツイツイ酒が進みそうである.
(撮影協力:イトコー株式会社)

Vol. 86 No. 4「スパイラルエスカレーター」

どこに鋳物が使われているかわかりますか?

実は,エスカレーターのステップです.この写真は,横浜のランドマークプラザにあるスパイラルエスカレーターです.曲線を描いて昇り降りする珍しいエスカレーターで,世界でも100台弱が稼働しているだけのようです.

このエスカレーターのステップにも,アルミニウム合金のダイカスト品が使われています.かなり大きな製品で,高い寸法精度を要求されます.このような精密部品の製造にも鋳造技術が役立っています.

Vol. 86 No. 5「鋳鉄製アイロン」

炭火アイロンは鋳鉄鋳物でできており,内部に炭火を入れ,その熱を利用して衣類のしわ伸ばしや形なおしを行う器具です.

上面は開閉式の蓋になっており,ガス抜きの煙突と握り手がある.炭火アイロンが日本に輸入されたのは幕末頃とされており,ペリー来航時の様子を著した松浦武四郎の『下田日記』にその絵が見られ,明治に入って広く普及した,とされています.

炭火アイロンが登場するまで,日本では金属製の片手鍋のような容器,これを火のしという,に炭火を入れ,この熱と容器の重みで布のしわを伸ばしていました.

炭火アイロンは中国から伝わり,一部では昭和30年頃まで使われていました.アイロンは英語では an ironで,英語の鉄 iron のなまったもので,本来は鉄を表す用語です.
写真提供・コメント:中江秀雄さん(早稲田大学名誉教授)

Vol. 86 No. 6「鋳鉄の柱」

1914年12月の東京駅開業時から100年間ホームの屋根を支えた柱があります.

5番線の山手線外回りと6番線の京浜東北線南行きホームの有楽町寄りの14本の柱です.14本は鋳鉄製で,柱頭に植物のレリーフがあるのが特徴です.

5対10本は白っぽい柱で,2対4本は屋根の上で架線を支える架線ビームの下にある緑色の太い柱です.100年間屋根を支え続けてきましたが,老朽化のため6月ごろから新築工事に着手することになったそうです.

新しい屋根では新しい柱と置き換わることになりますが,ホームの端近くの1対2本は記念碑として残されるそうです.機会があったら,ご覧になってみてはいかがでしょうか.

Vol. 86 No. 7「スクリュープロペラ」

7月に入り,梅雨明けが待ち遠しい季節になってきました.夏と言えば,海ですね.

表新の写真は,船の科学館に展示されている大型船のスクリュープロペラです.

このプロペラは5万トンクラスの大型船に採用されているもので,4翼一体型になっていて,直径が6メートル,重量は15.3トンもあるそうです.

プロペラには,高い機械的性質や耐食性などが求められるため,アルミニウム青銅鋳物が適用されています.

Vol. 86 No. 8「くるみ割り器」

2014年5月18日から21日にかけての4日間,スペインのビルバオ市で,第71回世界鋳造会議が開催されました.

表紙の写真は,その時に参加者に配られた記念品です.真鍮製のくるみ割り器で,手にずっしりとした重さを感じます.

日本では,殻つきのくるみはあまり街中で見ることはありませんが,スペインのスーパーでは,量り売りをしていました.このようなくるみ割り器も一般的なのかもしれません.
(写真・コメント: 神戸洋史さん(日産自動車))

Vol. 86 No. 9「天体望遠鏡」

9月になり,空も澄んできました.これからは夜空を観察するのにうってつけの季節です.惑星や恒星などの天体を観察するために,天体望遠鏡を使います.

天体望遠鏡の性能はレンズや鏡筒に左右されることは言うまでもありませんが,それを支える架台も重要な機能を持っています.表紙の写真の㈱高橋製作所の天体望遠鏡では,この架台の部品などに鋳物を用いています.

アルミニウム合金の砂型鋳造品を適用することにより,軽量で高剛性・高精度な架台を構成しています. 
(撮影協力:㈱高橋製作所)

Vol. 86 No. 10「羽釜風呂(五右衛門風呂)」

今月の表紙は羽釜風呂,目次の写真は五右衛門風呂(長州風呂)です.

鋳鉄製で味のある羽釜や五右衛門風呂ですが,一般の家庭ではあまり見られなくなり,現在日本で五右衛門風呂を製作しているのは1社だけということです.
(表紙(羽釜風呂):大原温泉 湯元京の民宿 大原の里  写真提供:大和重工㈱)

Vol. 86 No. 11「大砲」

この大砲は,ペリー来航に際し危機感をいだいた幕府が佐賀の鍋島藩に大砲の鋳造を依頼し,品川台場に据え付けたものと言われてきた.佐賀藩が造った大砲は,戦前には靖国神社その他に十数門あったが,今はこの砲を除くと全てが不明である.

この砲は品川台場に据付けられていたもので,品川台場が廃止された後は築地の海軍省構内で重量物の巻き上げ機の重石に使われていた.

それが鍋島邸に払い下げられ,現在は東京都渋谷区松濤の鍋島邸跡に建てられている戸栗美術館の中庭にある

後に斎藤※※が,この大砲はそこに刻まれた文字から, 1820年代か,或いはそれ以前の古いもので,佐賀藩ではなくアメリカのJohn Clark & Co. U.S.の Bellona Foundryで鋳造されたものと解読している.

金子 功:反射炉Ⅰ,法政大学出版局 (1995,4,28)143 
斎藤利生:『幕末の佐賀藩製鋳鉄砲に対する考証上の誤り』,防衛大学校紀要 45号(1982,9)231-256
(表紙写真・コメント:中江秀雄さん(早稲田大学名誉教授))

Vol. 86 No. 12「ダルマストーブ」

駅や学校の教室,あるいは列車などで,昔はおなじみだったダルマストーブ.ガスや石油ストーブの普及ですっかり姿を消し,なかなか見かけなくなってしまいました.

しかしまるっこくて愛嬌のあるレトロなフォルムは今でも根強い人気があり,観光客向けの列車や街中の店などで見かけることができます.

写真のダルマストーブは埼玉県にある古民家を利用したギャラリー内に置かれており,暖かな雰囲気を演出しています.
(撮影協力:古民家ギャラリーかぐや)