光学顕微鏡で炭素鋼を観察すると黒と白の模様が現れます.どうしてフェライトは白く,パーライトは黒い縞なのでしょうか.

 組織観察を行うためには,一般に落射照明による明視野の光学顕微鏡(金属顕微鏡)を用います.試料を鏡面研磨した状態で光学顕微鏡で観察しても金属組織は現れません.試料表面に当たる光が均一に反射されるためです.そこで組織を見る […]

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接種をすれば引張強さが向上する事は事実です.しかし,接種をすれば黒鉛化が促進されて黒鉛量が増加し,密度は下がるはずですが,なぜ接種をして黒鉛化を促進した方が強度が向上するのでしょうか.

接種は,鋳込み直前の鋳鉄溶湯にフェロシリコン(Fe-Si)やカルシウムシリコン(Ca-Si)などを少量添加して凝固組織を改善し,機械的性質の向上を図る溶湯処理法の1つです.接種を施すことにより,鋳鉄の組織が改善され,チル […]

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オーステンパ処理を施すとベイナイト組織が現れます.等温変態処理温度の違いにより上部(羽毛状組織)と下部(針状組織)のベイナイトに分かれますが,なぜ組織に違いがみられるのでしょうか.上部と下部のベイナイトで機械的性質(引張強さや硬さ)はどの程度異なるのでしょうか.

鋳造品におけるオーステンパ処理の代表として,オーステンパ球状黒鉛鋳鉄(ADI:Austempered Ductile Iron)を念頭にお答えしたいと思います. 「羽毛状」「針状」とは主に光学顕微鏡による組織写真のイメー […]

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ねずみ鋳鉄の鋳物内で,A型黒鉛にD型黒鉛が混在していますが,なぜですか?

図1に,A型黒鉛にD型黒鉛が混在する組織写真の一例を示します.このような組織になる要因として,以下のことが考えられます. 接種が効かなかった可能性があります.接種剤がうまく溶けなければ,黒鉛の核が少なくなってすぐフェーデ […]

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ねずみ鋳鉄FC300にはSnを添加し,球状黒鉛鋳鉄FCD700にはCuを添加して製造しています.それぞれ高強度にするために,パーライト量を増やす目的なのでしょうか.逆に,ねずみ鋳鉄にCuを,球状黒鉛鋳鉄にSnをそれぞれ添加しても問題ないのでしょうか?

高強度にするためにねずみ鋳鉄または球状黒鉛鋳鉄にSnまたはCuをそれぞれ適量添加し,ほぼオールパーライトにすることが目的です.  逆にねずみ鋳鉄にCuを,球状黒鉛鋳鉄にSnを添加しても問題ありません. 生産上高強度FCに […]

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接種する事で組織が微細化され強靭になると言われるのはなぜでしょうか? 共晶セルを微細化すると結晶粒界の面積が増加するので,微細化しない方が引張強さは強いのではないでしょうか? 

強靭化の度合にもよりますが,接種の効果も強靭化の一因子です.とは言え高強度で高延性を得られるかといえば,黒鉛化促進接種剤では延性向上を期待できますが,強度は低下し,パーライト促進接種剤を使えば逆となります.ご存知のように […]

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Fe-C系状態図で黒鉛の晶出量を求めると数%ですが,顕微鏡組織から判定すると10~15%に見え,文献にもそう書かれています.この違いはなんですか?

Fe-C系状態図における黒鉛晶出量は,重量%で表示されています.一方,顕微鏡組織における黒鉛晶出量は体積%もしくは面積%で表示されています.よって,状態図の重量と顕微鏡組織での黒鉛体積%の間には,近似式で計算すると,式( […]

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鋳鉄材料の規格は引張強さや伸びで規定されていますが, 値を求めるときの有効数字はどこまでですか? 具体的に教えてください.

引張試験は特殊な場合(規程の試験片が採取できないなど)を除いて,基本的にはJIS Z 2241「金属材料引張試験方法」に則った方法で実施する必要があります.一般に引張試験結果は, 材料規格に規定のない場合は, 少なくとも […]

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接種は本当に黒鉛化を促進するのでしょうか?

Fe-G系凝固(共晶Fe3C:チルが無い)した鋳鉄の黒鉛量は,おおよそ凝固時の晶出量(Fe-C二元複平衡状態図のE´点)とその後の共析変態完了時までの析出量の和になります.接種は,基地組織(フェライト/パーライト率)にも […]

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鋳鉄溶湯の熱分析で得られる冷却微分曲線で,凝固終了時の傾きがマイナスからプラスに転じる点の角度θが小さいほど引けにくい溶湯だという文献がありますが,この理屈が良く分かりません.どういった理由で角度θが小さいと引けにくい溶湯だと言えるのでしょうか?

θが小さいことは熱電対を挿入した部位の熱伝導率が小さいことを意味しており,熱伝導率が小さくなる原因は,ひけ巣(空洞)の存在と考えられています.なぜ冷却速度曲線(冷却微分曲線)にθが表れるのかという点からもう少し詳しく説明 […]

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