Vol.94No.1 日下賞受賞者紹介(3) 古屋毅文さん
学会表彰のひとつである「日下賞」は,今後の活躍が期待される若手の研究者・技術者に贈られる賞です.2021年度に授賞された方々の研究内容や今後の目標等を紹介するシリーズの第3回目は,サンデン株式会社の古屋毅文さんです.
皆様こんにちは,サンデン株式会社の古屋と申します.この度は,日下賞という光栄な賞を頂きまして見に余る光栄に存じます.さらには,YFEだよりを執筆させて頂くことになり恐縮至極でございます.
私がダイカストと最初に出会ったのは,約18年前,当時アルミ構造材の開発・製造販売を手掛けるメーカーに入社した際,入社間もない私にもダイカスト部品の設計を任せて頂き,上司や先輩に教わりながら,抜き勾配の付与や,どこがアンダーカットになるなど試行錯誤しながら,ダイカストの蝶番を設計したことが始まりでした.何とか形になったものの,機械加工部の加工代過多により加工後に鋳巣が発生したりなど,今思い返せば鋳造性が考慮できおらず,鋳造現場の方々に大変ご迷惑をおかけしたことを思い出します.その時,鋳造現場の人に,鋳造方案や,鋳造条件設定などいわゆるかんこつについて色々と話をして頂きました.その当時は全てを理解できなかったですが,製品設計だけをしていた私にとって,職人的な鋳造技術にとても興味を持ったことが,今も私がダイカストに携わっている源になっていると感じております.
そこから紆余曲折ありましたが,ダイカストメーカーに就職しました.見ること,知ることがとても新鮮で,その時わくわくした気持ちを今でも覚えております.そこでは,お客様から頂いた図面に対して最適なダイカスト形状の提案をしたり,鋳造方案の設計をしたりしておりました.また,鋳造方案設計をした金型の立会いや,不良対策など,鋳造現場で見たり聞いたり作業したりと,職人的な技術を会得することはとても刺激的な日々でした.
色々な不良対策の活動をしてきた中でも,印象に残っているのはダイカストから鋳造方案部を除去した際に,ゲート破面に発生する欠け込みの不良対策です.対策前は,現状把握をするために鋳造現場の人と手折りで鋳造方案部を除去しては,「あー欠け込み不良だ」とどうしようもない気持ちになったことを覚えております.欠け込み不良の原因が破断チル層だということを確認し,鋳造条件の最適化や,最終的には鋳造方案の見直しを行いました.結果,最終的に欠け込み不良を0%にすることができました.鋳造現場で,綺麗な破面を何十個と連続して見た時は,一緒に対策をした人と笑ってしまいました.
ただ,不良は発生しないに越したことはありません.物ができた後では,修正する時間や費用も大きなものになってしまいますし,変更が難しい場合もよくあります.そのためにも,上流で汗をかいて最適なダイカスト形状にしていくことの大切さを学んだ気がします.現在は,より上流に近いところで最適なダイカスト形状の提案業務をしております.
また,私はダイカスト業界の方々との出会いにも恵まれました.西直美先生をはじめダイカスト協会で出会った皆様,同YDECで知り合い切磋琢磨させて頂いております皆様,鋳造工学会でお世話になっております皆様など多くの方々にご指導いただき受賞に至りました.紙面を借りて御礼を申し上げます.
この賞に恥じないよう微力ではありますが,鋳造分野に貢献できるよう日々精進していく所存です.今後ともご指導宜しくお願いいたします.
連絡先
サンデン株式会社 製造本部 生産技術ユニット 素形材開発セクション
古屋 毅文
〒372-8558 群馬県伊勢崎市八斗島町350
TEL:0270-31-7271
E-Mail:takafumi.furuya.yq(at)g-sanden.com
*(at)を@に変えて送信ください.