鋳物人
鋳造界で活躍する人々に,鋳物とのかかわりや将来の夢などを中心に,さまざまなお話をうかがいました.「鋳物人(いもじん)」とは,“鋳物を通じて集まった人々のコミュニティ”を指す造語です.溶湯よりも熱い「鋳物人」の魅力に出会えます.
*各記事の年齢・所属は,インタビュー当時のものです.
木挽謙治さん(56歳) ㈱クボタ
高校のOBに「クボタに入れ」と言われ
「はい!」と即答.
製品はずいぶん不良にしたけれど
人間として不良になることがなかったのは
尊敬できる人たちとの出会いが
あったからこそ.
岩堀昭弘さん(65歳) 岐阜大学イノベーション創出若手人材養成センター
顕微鏡で見つけた変な組織を
「破断チル層」と名付けた.
下手なネーミングと言われたが,
この発見が評価され,
多く引用されるのはとても名誉なこと.
石原安興さん(72歳) 石原技術士事務所所長
転勤8回,工場立ち上げ3回.
”初湯”の記念品3つは
勲章のようなもの
現場も研究職もやり,
大変だったけど楽しかった.
木口昭二さん(62歳) 近畿大学教授
金属が溶ける,溶かすというのは
こんなに面白いものか.
大きな溶解炉に胸を躍らせ
情熱をもって
鋳造を盛り上げていきたい.
杉原優子さん(28歳) 株式会社能作
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デザイナーから上がってきた原型を
鋳物に変えていくことが私の仕事.
どんなに難しくても
なるべくデザイン変更はしたくない.
望み通りのものを作りたい.
梅田泰輔さん(32歳) 株式会社能作
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伝統ばかりにこだわることなく
常に新しいものを探して挑戦していく.
自分の周りに広がっているフィールドは
限りなく広く,
荒野を行くような気分で
日々鋳物に向き合っている.
伊藤光男さん(62歳) 伊藤鉄工株式会社
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「キューポラのある街」川口の
職人の技はすばらしい.
でもそれだけに頼っていては
新しいものはできない.
科学と実践とは
やはり両輪であるのだ.
鹿毛秀彦さん(61歳) 有限会社日下レアメタル研究所
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鋳物とは自然そのもの.
考え出せば
鋳物から宇宙の話まで
ぜんぶつながっていく.
だから鋳物って
こんなに面白いんですね..
平塚貞人さん(47歳) 岩手大学
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夢を語り人にものを教える教授職.
学生が目を輝かせてくれると
とても嬉しくなる.
夢は
いつか岩手を
キャスティングバレーにすること.
北岡山治さん(71歳)日軽エムシーアルミ(株)
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学費が払えず大学退学の危機.
それを乗り越え,
“コロンブスの卵”の発想で
「Kモールド法」を生み出した.
あれから40年,
JIS化,IOS化を目指していく.
白川博一さん(49歳) トヨタ自動車(株)
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いろいろなことを考える領域が
技術的に残っている素形材.
だからこそ,
“ものづくり”を真剣に考えて
若い人を育てなければいけない.
野口 徹さん(69歳)北海道大学名誉教授
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戦時中に生まれ
物心ついたときには占領下.
“日本に必要なのは技術力”
と思った10歳の頃から初志貫徹,
北大で40年間,研究と教育に従事.
神戸洋史さん(56歳)日産自動車㈱
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謎解き好きの少年が
飛行機事故をきっかけに金属の道へ.
「仮説を立てたら実験で確かめろ」
の教えを心に刻み,
たくさんの自動車部品開発に携わる
大澤嘉昭さん(59歳)物質・材料研究機構
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鋳造の研究室で唯一機械工学科出身.
知識を生かして実験装置を自作.
それがやがて全国で使われるように.
「自分の考えた装置が世で役立つのは
とても大きな喜びです」
三輪謙治さん(61歳)科学技術交流財団
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蓄積した知識や勘に基づいた新しい発想は,
しつこく追い続けることが大事.
最初はだれからも相手にされなくても,
諦めないことで大きな成果が得られる.
小林 武さん(72歳)関西大学名誉教授
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「“人にものを教える”という仕事に,
私は割と向いていると思っています.
徹底して調べて教えると
相手もしっかり覚えてくれるし
反響があるんです」
橋本邦弘さん(55歳)新東工業株式会社
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現象はマジックでも奇跡でもなく必然で
工学とはその現象を操ろうとすること.
怪しいと思ったら何日でも張り付いて,
そこで何が起こっているのかを見る.
答えはすべて現場にあるのです.
茂木徹一さん(70歳)千葉工業大学教授
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16ミリフィルムで見た
溶ける鉄のシーンに魅せられ
金属を志した高校3年生.
それから鋳物・凝固研究一筋で
早半世紀.
糸藤春喜さん(57歳)東北大学ACSセンター
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論文を書きたくなくて
大学進学をやめたのに,
その後一転,
世界レベルの研究を意識して
海外にまで論文を送る研究者に
里 達雄さん(62歳)東京工業大学教授
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徳之島から10代で単身上京し,
東京に馴染めず患ったホームシック.
「精一杯がんばること」の教えで乗り越え
金属研究の道へ.
木村博彦さん(71歳)株式会社木村鋳造所会長
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複雑で暗黙知がいっぱいあり,
いつまでも解明できない.
それがものづくりを
ずっとおもしろいものにしてくれるんです
佐藤健二さん(60歳)東京都立産業技術研究センター
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いちばん面白いのは
実は不良なんです.
初めて見る不良は
今でもドキッとします
神尾彰彦さん(72歳)東京工業大学名誉教授
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溶けた金属を初めて目にした時の
たとえがたい美しさは忘れない.
大勢の若者に
鋳造,材料の楽しさを知ってもらいたい
永瀬重一さん(40歳)永瀬留十郎工場社長
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期せず若くして社長就任.
“仕事は面白くなければならない”
をポリシーに,
社員の思いを大切にして,
いい仕事をしていきたい.
中江秀雄さん(69歳)早稲田大学教授
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「鋳物は面白いっていうことを教えるのは,
奥が深すぎて大変なんですよ.
鋳造学は総合学問ですから」
岡田民雄さん(74歳)日本ルツボ(株)代表取締
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文学部出身の開発者
専門家でないことを逆に強みにし,
「テストに失敗はない」を座右の銘に日々開発に取り組む
堀江 皓さん(68歳)岩手大学特任教授
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初めて顕微鏡で見た“パチンコ玉”みたいな
ノジュラーとの出会いから50年
諦めなければ必ずチャンスは回ってくる
恒川好樹さん(65歳)豊田工業大学教授
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否応なしの人事異動で大学へ
豊田工業大学の立ち上げから30余年の教授職