公益社団法人日本鋳造工学会|Japan Foundry Engineering Society

平塚貞人さん(47歳) 岩手大学

平塚貞人さん(47歳) 岩手大学

第84巻(2012)第11号

夢を語り人にものを教える教授職.
学生が目を輝かせてくれると
とても嬉しくなる.
夢は
いつか岩手を
キャスティングバレーにすること

<プロフィール>

  • 氏 名: 平塚貞人さん(47歳) 岩手大学
  • 出身地: 宮城県
  • 略 歴: 1986年岩手大学工学部卒業,1988年東北大学大学院工学研究科修了,古河電気工業㈱入社.1990年岩手大学助手,2000年同大学助教授,2008年より同大学教授.

Q 平塚先生が初めて鋳造と出会ったのはいつでしょうか.

A 大学3年のときの学生実験が最初です.自分で砂型を作り,灰皿のような小さな鋳物を作ったのです.岩手大学の金属工学科では2年次から鉄冶金学や金属組織学,金属材料学などの講義が始まるので,金属についての基礎知識は持っていましたし,見たときは簡単そうに思えたのですが,実際にやってみると大違いで,砂の突き固めからアルミの流し込みと,真剣になってやったのを覚えています.静かに砂型を開け,出てきた鋳物に浮き彫り模様の菊の花びらが一枚一枚きれいに現れているのを見たときは,鋳造ってすごいなと感動しました.鋳物の魅力はなんといっても形状の自由度が高いことですが,ただ製品を見せられるのと,実際に自分でやってみるのとでは感動が違いますね.この鋳造実験は今でもいちばん人気があり,もう30年もプログラムを変えず続いているんです.

 それからもうひとつ.私が鋳造と深くかかわっていく上で,堀江皓先生(第29代日本鋳造工学会会長)との出会いも大きなものでした.

 私が学生のころ,大学の近くの上田通りは安く飲み食いができる学生街で,帰りにはよく飲みに行っていました.大学3年の春,学生実験が終わった後で友人と行きつけの「ポパイ」という店で飲んでいたときのことです.隣のテーブルから「君たちはどこの学生かね?」と声をかけてきた人がありました.それが堀江先生だったのです.しかし当時堀江先生はまだ助手で講義を担当していなかったので,私は相手がだれだかわからず,聞かれたまま「工学部の金属です」と答えました.すると今度は「では将来は何をしたいのかね?」と聞かれました.まだ勉強することしか考えていない時代でしたから,「まだわかりません」と答えると,そうかとうなずき,そして「よく遊び,よく遊び,そしてよく学べ」と笑っていました.その後2週間ほどして金属工学実験の授業で堀江先生を見かけ「あ,あの時声を掛けてきたのはこの方だったのか!」と初めて知ることになりました.この昭和60年は堀江先生が日下賞と小林賞を同時に受賞された年でもあり,研究室そのものがとても元気で勢いがあって,学生からもっとも人気がありました.私も4年生になってこの鉄冶金学講座に所属することになりましたが,研究そのものはもちろんのこと,テニス大会や飲み会などのイベントも多くて,とにかく元気で楽しい研究室でした.

 

Q  一度企業に就職されてから大学へ戻られたということですが,企業と大学ではどのように環境が違いますか.

A  私が大学を卒業する年代はちょうどバブル期で,進学より就職する学生が圧倒的に多い時代でした.しかし私はもうちょっと勉強したかったので東北大学の大学院へ進み,その後横浜の会社に就職しました.そして数年後,縁があってまた岩手大学に戻り,堀江先生のもとで本格的に鋳鉄の研究をすることになったのです.大学は企業と違って,自分の好きなときに好きな実験ができるという点で,とても恵まれています.私は小さなころから,家中の時計を分解してみたり,台所で味噌や砂糖に醤油を加えてかき回していたりなどのいたずらで母親を困らせたほど,工作やものの仕組みを見るのが好きな子供でしたので,その延長で,溶かした金属に元素を加えるとどう変化するのか等に大変興味があり,そういう実験が自由にできる環境にある大学という場所は自分に合っていると思います.

 

Q 大学で「鋳物」を享受するにあたって,授業で工夫していることはありますか.

A 自分の夢を語って人にものを教える,というのはとても面白い仕事です.しかしテレビ時代に育った今時の学生は難しい教科書を読むだけでは興味を持ってくれません.そこで,テレビCMのように,20分に一度くらいの割合で材料に関する雑談を入れるようにしています.ここは岩手ですから南部鉄器などは学生もよく知っていますが,その材料が鋳鉄で,それは自動車のエンジンにも使われているのだと言うと,とても驚かれます.身の回りにあるものがどうやって作られているか考えてみる機会というのはそれまであまり経験がないので,どの学生も興味津々で聞いてくれますよ.また,一般の人に「材料工学」というと,「材料というと,ジャガイモとかニンジン……?」という反応が返ってくるのが普通です.金属材料より料理の材料のほうが生活に近いですからね.そこを逆手に取って,そういう身近なものから金属材料にうまく結び付けていくようにすると,とっつきやすいようです.もともと,ものづくりに興味があってこの学科を選んでいる学生が多いですから,目を輝かせて講義を聞いてくれると,こちらもうれしいですね.

 

Q これからしてみたいことはどんなことですか.

A 以前アメリカに行ったとき,国家プロジェクトとして大学にいろいろな企業の人が集まって研究をしていました.そこでは競合企業もなにもなく,皆が一つになって和気藹々と,そして真剣に研究に取り組んでいたのです.その姿を見て,私も日本でそういう取り組みがしたいと思うようになりました.岩手大学工学部には附属施設として「鋳造技術研究センター」があり,技術教育・研究や地域産業の活性化に取り組んでいます.このような恵まれた環境を活かして,中小企業の人に集まってもらったり,地域の人が参加できたりするような,いろいろな試みをしていきたいと思っています.そして岩手を含めた東北を鋳造の拠点にし,岩手を日本のキャスティングバレーにしたい,というのが私の今の夢です.

 

<コラム> 平塚先生に5つの質問!

 

Q1 座右の銘は?
A  為せば成る,為さねば成らぬ何事も,成らぬは人の為さぬなりけり(上杉鷹山)

 

Q2 趣味は?
A  テニス,スキー

 

Q3 特技は?
A  日曜大工(工作や自宅の簡単な修理程度ですが)

 

Q4 自分を動物に例えると?
A  くまのプーさん(小学2年生の娘に聞いた答え.優しそうな印象のようです)

 

Q5 もし大学の先生になっていなかったら何になる?
A 今はインプラント治療に興味があるので,歯医者かな

 

PAGETOP
Copyright © 公益社団法人 日本鋳造工学会 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.