学会表彰のひとつである「日下賞」は,今後の活躍が期待される若手の研究者・技術者に贈られる賞です. 2022年度に授賞された方々の研究内容や今後の目標等を紹介するシリーズの第2回目は地方独立行政法人大阪産業技術研究所の柴田顕弘さんです.

 

 皆様こんにちは,大阪産業技術研究所の柴田と申します.この度,日下賞という栄誉ある賞をいただき大変光栄に存じます.また,YFEだよりにて紹介記事を執筆する機会もいただき,大変嬉しく思います.簡単ではありますが,Q&A形式で自己紹介させていただきます.

○あなたは何屋?
 研究者や技術者は,自身の専門から○○屋と表現することがあります.ここ数年,超硬合金と高クロム鋳鉄の鋳ぐるみに関して研究発表してきたことから,私について鉄の溶解に慣れている根っからの鉄屋との印象を受けられるかもしれません.しかし,元々はマグネシウムの高温強度やアルミニウムの溶湯処理を研究・開発テーマとしてきたことから,マグネ屋やアルミ屋を自認・自称しております.そんな私が初めて鉄を溶解し,鋳鉄の金属組織を観察し,さらには鋳ぐるみに関わったのは研究所に入所してからになります.鉄の世界は広すぎると感じると同時に,少しは鋳鉄が分かった気になっております.

図1 これまでに様々な金属を溶解してきた10 kg高周波誘導溶解炉

○取り組んでいる研究や将来の目標は?
 鋳ぐるみ材のさらなる長寿命化・歩留まり向上について研究しております.鋳ぐるみ材そのものは何十年も前から研究・開発されてきた材料です.私も超硬合金と高クロム鋳鉄溶湯の界面反応について報告してまいりましたが,未だによく分からない部分があります.詳しくは研究のネタのためお話しできませんが,不明な部分を解明できれば鋳ぐるみ材はさらに進歩すると期待しております.しかし,得られた実験結果は解釈に困るものばかり,常に頭を悩ませております.
 これまでの研究では1種類の超硬合金を用いて調査を進めてきましたが,世の中にはこれに色々と添加した超硬合金や,まったく異なるサーメットも存在します.これらの種類を問わずに長寿命と高歩留まりを両立可能な技術の実現を目標としております.

図2 実験装置の改造中

○名前をググると色々な講演をしているようだけど?
 鋳造工学会での研究発表だけではなく,人材育成などの講義・講演を依頼される機会があります.これまでに「東大阪市立産業技術支援センターの中堅人材育成コース」や「堺市産業振興センターの品質で差別化を図るセミナー」など,多くの講義・講演をさせていただきました.これらではアルミ鋳造を中心に熱く語らせていただいております.また,本年度は「関西鋳造懇話会」において鋳ぐるみについてお話しさせていただく機会にも恵まれ,大変ありがたく思います.

○最後に一言
 鋳造の世界に飛び込んで十数年,夏の暑さと溶湯の熱で倒れそうになり,熱いことに気が付かず火傷しそうになり,さらに砂や煤で顔を真っ黒にすることもありました.初めはとんでもない世界に来てしまったとも思いましたが,皆様に支えられて鋳物が好きなまま今に至ることができました.今後も精進して参りますので,ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます.

 
連絡先

所属 地方独立行政法人大阪産業技術研究所
柴田 顕弘
〒594-1157 大阪府和泉市あゆみ野2-7-1
TEL:0725-51-2525(総合受付)
E-Mail:ShibataA(at)orist.jp
*(at)を@に変えて送信ください.