学会表彰のひとつである「日下賞」は,今後の活躍が期待される若手の研究者・技術者に贈られる賞です. 2024年度に受賞された方々の研究内容や今後の目標等を今号からシリーズとして,紹介いたします.第1回目は熊本県産業技術センターの池田朋弘さんです.
熊本県産業技術センターの池田と申します.この度は,身に余る光栄な賞をいただき,誠に有難うございます.これまでご指導頂きました先生,先輩の皆様に心よりお礼申し上げます.また,YFEだよりにて執筆する機会をいただき有難うございます.
熊本県産業技術センターは,熊本県が1922年に設置した工業試験場を母体とし,工業技術センターを経て,2007年に食品加工研究所,計量検定所が統合して現在の名称になりました.現在は,総務管理室,技術交流企画室,ものづくり室,半導体技術室,材料・地域資源室,食品加工技術室の6室体制となっており,私はものづくり室に所属しています.ものづくり室は,ものづくりの基盤となる機械設計,回路設計,金属・機械加工,精密測定,電子測定,金属分析及び強度試験などの製造プロセス全般に係る技術支援を行っています.地域の企業の皆様と協働で,製品開発や工程の改善などに取り組んでおり,様々な製品に触れる機会に恵まれます.経験を重ねるほど,多くの分野で鋳物が必要とされることを改めて実感します.ご相談いただく内容には鋳物に関することが多くあり,その受け皿になれるよう,日々研鑽を重ねる必要があります.自身の未熟さを痛感することも多く,鋳造工学会への参加,研究を続け,成長していきたいです.
最近取り組んでいる研究については,「スクラッチ(引掻き)試験による金属の特徴づけ」があります.今まで金属を引掻いてみようと思ったことはありませんでしたが,先輩職員に教えて頂いたことがきっかけでこの試験に興味を持ちました.金属を引掻いてみると,自分の想像以上に多くの情報が得られることに感動し,スクラッチ推しとなりました.僭越ながらスクラッチ試験について少しご説明すると,この方法は,試験片表面に圧子を押し付けながら引掻く試験であり,変位量,摩擦力,アコースティックエミッション計測や圧痕観察などと組み合わせることにより,例えば評価材の破壊特性を捉えることに役立ちます.試験結果が数値化でき,視覚的にも分かり易く,誰でも簡単に試験を実施できます.様々な場面において活躍できる評価技術であると期待しています.鋳物に関連した事例について,鋳造工学会で発表を重ねることが目標のひとつです.
熊本の地域をはじめ,皆様からのご相談のお役に立てるよう,鋳物に関わる研究に引き続き励んで参ります.今後ともご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます.
連絡先
所属 熊本県産業技術センター
池田朋弘
〒862-0901 熊本市東区東町3-11-38
TEL:096-368-2101
E-Mail:ikeda(at)kumamoto-iri.jp*(at)を@に変換してください