学会表彰のひとつである「日下賞」は,今後の活躍が期待される若手の研究者・技術者に贈られる賞です.2023年度に受賞された方々の研究内容や今後の目標等を紹介するシリーズの第3回目は株式会社栗本鐵工所の堤親平さんです.
皆様,こんにちは.株式会社栗本鐵工所の堤と申します.この度は,日下賞という栄えある賞を頂き,大変光栄に存じます.更には,YFEだよりを執筆する機会を頂き,誠にありがとうございます.
弊社は上下水道用ダクタイル鉄管やFRPM管,各種流体制御用のバルブや空調ダクトなどの「社会インフラ」,自動車部品製造用の鍛造プレス機や混錬機,粉体機器などの「産業設備」を二本柱とし,多岐にわたる事業を展開しております.私が所属しておりますパイプシステム事業部は,上下水道,農業用水などのライフラインとしてご使用頂く水道管としてダクタイル鉄管の製造・販売を行っております.
2008年に入社後は,堺工場の生産技術課に配属され,ダクタイル鉄管製造に際する溶解・鋳造・焼鈍工程について,新技術の導入や生産性向上・コストダウンへの取り組みを行ってきました.大学時代は機械系の学科に在籍していたため,材料に関する知識は乏しく,中でも鋳鉄に関する知識はないに等しい状態でした.そのため,入社後,先輩方に教えて頂きながら,一から勉強しました.
堺工場の溶解炉は30t/hキュポラで溶解を行っており,私が入社した当時から,鋳物用コークスについては,海外からの輸入が占める割合が非常に高く,供給不安や価格高騰のリスクを抱えている状況でした.そのため,鋳物用コークスに変わるキュポラ燃料として,黒鉛焼成品や高炉用コークスの導入などの取り組みを積極的に行ってきました.キュポラ内の挙動を把握するため,一日中キュポラから出銑される溶湯のサンプリング,溶湯温度測定を行い,データを集め,得られたデータをもとに先輩や現場の方々と議論を交わした日々を懐かしく思い出します.それらの取り組みを鋳造工学会で発表させて頂き,2010年には豊田賞を頂くことができました.
その後,加賀屋工場の研究部へ異動となり,高強度ダクタイル鋳鉄の研究開発やダクタイル鉄管の防食材料として使用する,亜鉛系溶射材料,塗料開発に携わり,2022年に堺工場製造部へ,2023年には現職である溶解係へと配属になりました.現在は,キュポラにおけるCO2排出量削減の取り組みとして,バイオコークスを始めとした新たなバイオマス燃料の導入に向けて,これまでとは違った立場で,研究部の若いスタッフと一緒に取り組みを進めています.私が,日下賞を頂けるまでに成長できた今があるのは,仕事のみに限らない諸先輩方の多くの教えがあったからです.今後は,それらを後輩たちにも伝えていくと共に,私自身も日下賞に恥じぬ技術者になれる様,精進していきたいと思っております.今後ともご指導よろしくお願い致します.

図1 上水道用ダクタイル鉄管

図2 堺工場溶解係現場

 

所属 株式会社栗本鐵工所 パイプシステム事業部 堺製造部 堺製造課 溶解係
名前 堤 親平
〒592-8332 大阪府堺市西区石津西町14番地1
TEL:072-241-0245
E-Mail:s_tsutsumi(at)kurimoto.co.jp
*(at)を@に変えて送信ください.